都橋探偵事情『擬態』

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「俺のことでしょ?」  小野田が悟った。 「ああそうだ」 「気にしないでください」 「ああ、気にしない。死ぬ気でやってもらう」 「はい」  小野田が笑った。だが中西も気にしていた。この若者を並木の二の舞にしてはならない。 「よし、そろそろ行くか」 「はい」  二人は立ち上がった。 「どこに行くんだ?吉川は全部うたったらしいぞ。佐々木が頑張った」  布川が声を掛けた。 「そうですか、そりゃよかった。俺等はこれから警邏に行きます。休み明けには皆川の事務所に行きます。とぼけられて終いでしょうが、吉川がゲロしたことは伝えて来ます」 「吉川狙われるな?」 「でしょうね、ヒットマンが狙いを外したツケです。それぐらい覚悟してるでしょ。それじゃ」  中西が布川に一礼して歩き出した。その後を小野田が追う。 「小野田」  布川が呼んだ。 「はい」  小野田が振り返る。 「いや、いい」 「はい」  布川も小野田を心配した。中西は面倒看もいい、だが中西のそばにいるだけで危険が付きまとう。小野田に飛び火しなければと祈った。
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