都橋探偵事情『擬態』

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「言ったかどうか訊いてんだよ」 「そう粋がんな、これから皆川の事務所に行く。親分も怒るだろうなあ、高い金出してよ、玉取り損ねたあげくに間違ってサラリーマン撃っちゃって。お前の供述通りでしょっ引かれたら親分はもう戻れねえだろうなあ。まあ惚けるだろうがあのタヌキもよ」 「早く拘置所入れろよ、ここじゃあぶねえ。あの親父はハイライト10個で誰でも接見させるぞ」  吉川が監視当番に顎を振った。 「何だ人殺しが、狙われるのが恐いってか。皆川だけじゃねえ、李からも狙われるぞ。あいつら半端ねえぞ、仁義もへったくれもねえぞ」  日本のやくざは仁義が通じる。しかし韓国マフィアに仁義はない。ましてや狙われた李が黙っているわけがない。 「だから早く起訴しろってんだ」 「裏とってからだ。てめえの言うことをハイそうですかって頭から信用出来るか。殺されるのがいやだったらてめえで始末しろ」 「言いやがったなこの野郎」 「ああ、やってみろこの根性なしが」  吉川は中西に煽られて鉄格子を揺すった。 「班長おはようございます」  中西が布川に挨拶した。 「吉川に会って来たか?」 「今、煽って来ました。根性がありゃ、鉄格子に頭ぶつけて死ぬことも出来ますがどうでしょうかねえ」 「吉川死んだらお前責任取れよ」 「何言ってんですか、署のトラブルは署長の責任ですよ。俺はあんな奴のために辞めるわけにはいきません。何しろ弱いもんの見方ですから。それじゃ皆川会に殴り込みに行って来ます」
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