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「だけどやり直すことは出来る。君がやくざを選択するなら別だが。まだ君も彼女も若い、足を洗うと言うなら私は君に会わなかったことにする。いや追手からかく乱してあげてもいい。親分が有り金叩いても君を捜すつもりなら諦めた方がいいが、親分はそこまで執着していない。ここじゃ駄目だがもっと離れた土地なら安心だと思うよ」
「追われない保証はないだろう」
「いや追われない、約束してもいい」
「どうして分かる?」
「依頼金の額で分かる」
言って徳田が笑った。
「俺の値打ちってそんなもんなのかなあ」
「そんなもんさ」
徳田が言い切った。
「あんた」
少し離れた漁師小屋の陰から女が佐久間を呼んだ。
「あっち行ってろ」
佐久間が追いやった。佐久間と逃げた女で奈美恵である。顔が赤く丸顔で小太りだった。徳田の予想と外れた。
「働きもんじゃないのか彼女」
徳田はそんな気がした。所帯を持てば尽くしてくれるような感じがする。
「初音で賄いをしてる。女達の身の回りの世話全部やって一日千円だ。二人で住込みだから仕方ねえけどな」
佐久間が海に唾を吐いた。
「どうだい、君があのイカ釣り船に乗ったら。そうだこれ」
徳田は札入れから20万を出して佐久間に差し出した。
「何だよこれ?」
「君を捜すための依頼金だ、部屋でも借りなさい」
「乞食じゃねえよ」
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