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鍵と手紙 side達也①
つい先日、身内だけで祖母の一周忌を終えた。
その前日まで元気に過ごして、最後まで誰の手も煩わせずにあっさりと逝ってしまった。寂しくとも本人がさほど苦しまずに済んだのは、不幸中の幸いだと思った。
「何かね、鍵が出てきたんだって」
甥の郁が封筒から小さな鍵を取り出した。姉貴が形見に貰ったハンドバッグから見つかったそれは、自転車のよりも華奢だった。
「達ちゃんの得意分野でしょって」
「こんな時ばっかり調子のいい」
普段は探偵稼業を営む俺を、胡散臭い目で見ているくせに。郁は俺の仕事に興味があるようだが、所詮は今どきの小学生だ。ドライな感覚に俺の方がついていけない時もある。
「今さら遺言状探しでもないだろ」
「花ばあのお家、空き家のままじゃ傷んじゃうから、近いうちに処分するんだって」
口座などの手続きはとっくに済んでいる。形見分けするようなものは、見当たらなかった気がするが。
「宝探しみたい。ね、アルも連れてっていい?」
「まあ、半分遊びみたいなものだしな」
祖母が一人で住んでいた家は、ここから車で二時間ほどの、いわゆる里山と呼ばれる田舎町にある。夏休み前の三連休を利用して、俺たちはそこに行くことにした。
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