クリームソーダとレコード side達也②

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「それにしても、随分と丁寧に扱ってくれたようですね。今でもちゃんと聞けますよ」 「それだけ大切なものだったんでしょう」 俺が言うと、マスターは口元に微笑を浮かべたまま、黙って音楽を聞いていた。懐かしい音色は、彼の脳裏に何を見せているだろう。 「カッコいい曲だね。すっごいタマシイ入ってる」 いつの間にか郁がそばに来ていた。 「お手紙もあるんです。達ちゃんがダメだって見せてくれないけど、きっと花ばあの気持ちがいっぱい詰まってるよ」 「…そうだね。ありがとう」 「お前もたまにはいいこと言うな」 俺は郁の頭を人差し指でそっと小突いてやった。郁もへへへと笑っている。感傷だと笑われてもいい。年月を経て彼の元へ届くのも何かの縁だと思った。 コーヒーが出来上がった。 少し話がしたかったので俺は彼にも声をかけた。マスターが歩いていくと寝転んでいたアルが立ち上がり、彼の右足に寄り添うように鼻を近づけた。何か気になるのか、きゅんきゅんと小さく鳴いている。 「アル、どうしたの」 郁がアルを抱き上げた。マスターは微笑んでアルの頭をそっと撫でた。 「こっちは義足なんです。事故に遭って」 「…そうですか。そんなふうには見えなかったな」 彼はゆっくり腰を下ろすと、右足を庇うように手でさすった。 「彼女とは将来も考えたんですよ」 自分から話さないだろうと思っていたから少し驚いた。それは彼自身もだったらしく、ひょいと肩を(すく)めた。
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