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火曜日、仕事が終わり、杉浦さんがお寺の会議室で授業を始めた。
日にちが他の人と合わず、マンツーマン授業となった。
「時間はどのくらいですか?」
「山田さんの理解度次第で1時間~2時間。」
「う”、1時間で終わることを願います。」
杉浦さん、法衣を着たままホワイトボードの前に立ち
「では、始めます。」
「よろしくお願いします。」
「まず、49日って何?」
「中陰、亡くなられた方が7人の仏様の下で一週間づつ勉強してあの世に旅立つまでの期間。」
この前住職に答えたままを伝えた。
「そうだけど、それって、うちの寺の宗派だけど、よその宗派だったら違うんだよね。7人の神さまも詳しく言うと辻褄が合わなくなるから、どの宗派でも関係なくあてはまる49日を教えるから。」
「はい。」
「人は死んだらどうなる?」
「肉体を離れて魂が抜けます!」
「よくさ、魂が上に上がるって言うじゃん、あれ、間違い。」
「え?間違い?」
「魂が抜けて頭の上で肉体と魂をプチっときられて【落ちる】感覚になるらしい。落ちる~と思って目をつむって目を開けたら死んでるらしい。」
「上がるんじゃなくて落ちる?」
「そう、現に俺の親父は死際で『落ちるー!!!!』って叫んだ。」
「へぇ~。」
落ちるって初めて聞いた。
「で、死にました。これからどうなるか。死んだ日から50日かけて山に登ります。」
「山登り?」
「そう、山登り。ただ、山が分からないから山の麓まで最低1人の神様が連れて行ってくれます。」
私は平等院の【九品来迎図】を思い出した。あれってそういうこと?
「平等院の絵図で描かれてるやつですか?」
「ああ、そうそうあの絵図がそう。」
「死んだ人からは現世からの声は聞こえるし、見えるけど現世の人からは、あの世は見えないし声が聞こえないなから死んだ人の事は気付かない。だけど、現世の人がお経を唱えている声は聞こえるから盛大にお経を上げてあげると励みになるよね。」
「お経は応援歌ってことですか?」
「山登りだからね、辛いじゃん。」
「確かに。」
「で、49日かけてあと一歩の所で頂上前でお裁きがあります。」
「閻魔様ですか?」
「そう、ここで地獄と極楽を振り分けられる。」
「へ~。」
「で、極楽行きの人は登ってきた山をまた50日かけて下る。」
「折角、登ったのに下りるんですか?そのまま天上へ行くのかと思いましたが…。」
「50日かけて下ったら…死んだ日から50日かけて山に登って、50日かけて下った。はい、合計何日?」
「あ!だから百か日!」
「だから百か日法要の意味がある。」
「なるほど~。」
「で、百か日から1年、一周忌になったら初めにあの世に初めに連れてきてくれた神様が(最低1人)極楽までついてきてくれます。で、3回忌の時に極楽にたどり着き、阿弥陀如来が迎えに来てくれます。そういう手はず。」
「って、誰が見た人はいないんですよね~」
「まぁ、宗教ってそんなもん。」
なんやねん!
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