ビレン村からの旅立ち

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ビレン村からの旅立ち

 レディンさんの家に着き、レディンさんたちに村から出ていくことを告げると、皆一同に悲しみに包まれた。 「とうとうこの時が来ちゃったか。俺は二人のことは我が子のように思ってるよ。怪我しないように。必ず、ここに帰って来てね。いつでも大歓迎だから」 「ありがとうございました、レディンさん。必ず、またこの村に帰って来ます」 「パン、本当に美味しかったです。三年前に会えて良かったです。ありがとうございました」  レディンさんはシアとハグをした。 「三年間楽しかったよ。ありがとう」  エレナは俺の頭を撫でてきた。 「エレナさんもお元気で」 「レッくん、シアちゃん、仲良くね」  セリオはシアの腰にしがみついて来た。 「シアちゃん……レッくん……本当に行っちゃうの?」 「ごめんね、セリオ。俺たちはやらなきゃいけないことがあるんだ」 「やだよ、本当のお兄ちゃんとお姉ちゃんができたと思ったのに」  シアはしゃがんでセリオを抱え込んで背中をさすった。 「全てが終わったら帰ってくるから。その時は笑って迎えてね」 「うん……うん……笑って待ってるから、必ずまた来てね」  セリオはうえっうえっと泣き声をあげながら泣き出してしまった。 「泣いちゃダメだよ。必ず来るからね」 「必ずだよ」  シアは立ち上がってセリオの頭を撫でた。 「それじゃあ、もう行きます。今までありがとうございました」 「ありがとうございました」  レディンさんとエレナさんは笑いかけながら手を振り、セリオも泣きながら両手で手を振ってきた。  シアは手を振り返しながら歩みを進めた。 「ようやく、復讐が始まる」 「そうだね、私も力になるから。まずはどこへ向かおうか」 「決まってる。まずはなんて無い、目標はセルナスト王がいるエデルヴィック宮殿だ。 ……いや、やっぱり俺の故郷のセレニオ村に行きたい。宮殿に向かう途中にあるはず」 「わかった。じゃあ、行こうか」  シアは南西に向かって歩き始めた。 ====================  ひたすら南西に向かって進み続けていると、沈黙が少し寂しく感じるようになる。 「シアはなんであんなに強いの?」  三年間シアは俺に戦闘の方法を叩き込んでくれた。圧倒的な力はいつも側で見てきた。 「私は剣なんだよ。何千何万っていう戦いに参加してきた。色んな感情や魔力が私を蝕んで、私はそれを取り込んだ」 「そうか……それなら、強い魔法が使えて戦闘技能が高いのも納得……」  何か聞こえる。叫び声、それに金属がぶつかり合う音だ。さらに南に進んだ方から聞こえてくる。 「シア、あっちに向かおう」 「わかった。ちょっと走るよ」 「おう……うぉっ」  シアが走ると呼吸ができなくなり、視界は、何を見ているのかわからないくらいの速度で移り変わっていく。美しいが……く……苦しい……。 ====================  2分ほど走っていただろうか。もう……死にそうだ。 「見えたよ、……あのマーク、セルナスト王国騎士団の兵士だ。騎士団の兵士が武装した数人を包囲してる。今は持ち堪えてるようだけど、もう厳しそうだよ」 「一旦……止めてくれ……」  はぁっ……はぁっ……。やっと……息が……できる。  白い鎧を着た5人が赤い鎧を着た騎士団に取り囲まれている。 「あれが、騎士団か。少し話を聞いてみるか」  シアは俺を背負ったまま、歩いて王国兵たちの中心に向かっていった。
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