ヒーロームーブ

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ヒーロームーブ

「こんにちは、あなたたちは何をしているのですか」  俺が穏やかを装って話しかけると、一番後ろに立っていた最も豪華な鎧を着た人物が振り返り、剣を構えた。 「貴様、何者だ。王国に楯突くつもりか。私たちは国王の命令に従って反乱軍を抑え込むだけだ。女に背負われているだけのガキは大人しくしていろ」  反乱軍なんてものがあるのか。 「わかってるよ、俺はいつも背負われっぱなしだ。でも、俺にだって成し遂げなきゃいけないことがあるんだよ。 ……白い鎧を着た方の加勢に入る」  俺はシアに耳元で話しかけた。 「いいの? セルナスト王には直接は関係ないでしょ」 「いや、そんなことはない。俺の敵はセルナスト王を含めた、自分の利益のために他人を蹴落とす連中全員だ。騎士団ならなおさらだ」 「わかった」 ==================== 「小隊長、どうしますか?」  騎士団の一人が一番偉そうな男に耳打ちした。 「少し様子を見る」  シアは俺を地に降ろた。 「おい、不審な真似をするな。死にたくなければ大人しくしていろ」  シアは俺の手を握って、光を放った。 「なっ……女は……どこに消えた」  小隊長は大きな剣を盾のように構えて重心を後ろに移動させた。 「頑張って、救ってみせて」 「あぁ」  シアは剣となり、俺は立ち上がった。剣となったシアの装飾の一部には、黒い指輪が組み込まれている。俺が送ったアルド・ベリオールの指輪だ。 「やれるものならやってみたまえ。貴様のような貧弱なやつが剣を持ったところでどうにもならん」 「俺はこの力で、勝たなきゃいけないんだ」  騎士団の数人が俺の周りを静かに囲ってきた。  俺は手を振り上げて地面隆起させた。それに踏み込んで駆け上がった。  空中に飛び上がり、両手でシアを構える。 「これがシアの……歴代の剣士の力だ」 「か……構えろ!」  小隊長が焦ったように叫ぶと、兵士たちは上空に盾を構えた。  俺は空中で回転しながらシア振るい、1人の兵士の盾を弾き飛ばした。 「うぉっ……何て力……」  俺はそのままもう1人の兵士の盾に着地し、シアで盾を切り落とした。  盾を斬るなんて、シアだからこそできる芸当だ。 「な……こんな……ありえない。かかれ、一斉に攻撃しろ」  小隊長は命令するが、兵士たちはさっきの攻撃を見て、戦意を喪失しているようだ。 「さっさとやれ、この化け物を必ず殺せ!」  俺は左足を踏み出して盾を切り落とした一般兵の前にずいと乗り出し、体を左へ捻った。シアを右手で持ち、上に振り上げて手首をひねって一般兵の剣を跳ね飛ばした。 「な……こ、降参するから。もう、やめてくれ」  兵士は持っていた半分の盾を外して両手を上げた。そのまま後退りして逃げていった。 「おい、敵前逃亡は重大な規則違反だぞ」  その兵士はそのまま振り向かずに走り去っていった。  俺はそのまま、一般兵たちの盾と剣を跳ね飛ばしていった。 「逃げたい奴は逃げろ。ここで命張っても意味ないぞ」  俺がそう言うと、兵士たちは装備を外し、両手を上げた。 「お前ら、陛下への忠義はどうした」 「俺には食わせなきゃいけない家族がいるんです。人間にとって忠義よりも大切なものはたくさんあるんですよ」 「くそ、腰抜けどもが。忠義を貫かないと叶わないことだってあるだろうが」  小隊長とたった一人の一般兵を残して逃げていった。反乱軍の連中は呆気に取られてその場にただ立っていた。 「お前は残ったんだなサトゥール」 「当然ですよベルノス小隊長。私は国王陛下に忠誠を誓っているのですから」  くそ、あんな王のどこに忠節を尽くす価値がある。 「ありがとう。生きて帰ったら必ずお前を上に推薦してやるからな。……必ず勝つぞ!」 「はい!」  サトゥールと呼ばれた兵士は盾を構えてレイピアを強く握り、前に乗り出した。 「覚悟しろ、イレギュラー」
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