カミツレへようこそ

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カミツレへようこそ

 カミツレは信頼しきれないが、少しくらい基地に行ってみても良いかもしれない。そうすれば、何か情報が手に入るかもしれない。 「シア、行ってみないか」 「うん、良いよ。行こうか」 「それなら! 私が彼を連れて行くわよ。ずっとあなたじゃ大変でしょ」 「これは私の役目、私が永遠に背負い続けるって決めたの。あなたには絶対に譲らない」  シアはさっきのおちょくったような調子から一転、本気の顔になった。 「そう……なの……分かったわ」  レティアは口を半開きにして少し驚いた様子になった。 「行くわよ!」 「は、はい」  カミツレの連中は急いで荷物をまとめてレティアの後ろについた。 「ついてきて。歩きで20分もあれば着くと思うから」  シアはレティアの横について歩みを進めた。 ==================== 「見えたわ、あれがカミツレの基地よ」  15分程歩いた頃、レティアが右奥のぽつんと建っている小さな倉庫を指を指した。 「あれが、カミツレの基地? でもあんな小さな小屋に100人も入るのか?」 「ふふん、そう思うでしょ。あれはフェイクよ。地下に広い空間があるの」 「へぇ、まぁ確かにあんなところが基地だとは思わないだろうからな」 「それにしても、シアさんは力持ちなのね。レクロマ君を背負ったままで私たちよりも速く歩けるなんてね」 「まぁね、伊達に長生きしてないから」 「長生きねぇ。何歳くらいなの? 私は21歳で、見た感じ私よりも若そうに見えるけど」  俺よりも年上なのか。でも、シアに年齢の話って。 「18歳よ」 「でも、長生きって──」 「18歳」  シアの声には強い圧があった。 「シアに年齢のことはこれ以上言うなよ」 「わかったわ」  少し歩いて小屋の前に着くと、取手の無いドアがあった。 「これは押して入ればいいの?」  シアはドアに触って押そうとした。すると、レティアはシアの手を取った。 「シアさん、絶対に押して入っちゃだめ」  シアはさっと手を引いた。 「どういうこと?」 「このドアを押して入ると30秒後に床が迫り上がって潰れて死ぬわよ」 「え?」 「侵入者を防ぐためのトラップなの。入る時はこれを使うの」  レティアは四角い輪のような物を取り出した。  レティアは四角い輪のついた突起部分をドアに空いた小さな穴に差し込んで回した。 「こうやって取手をつけて引き戸にして開ければ……」  レティアがドアを引いて開けると、床が迫り上がって下に進む階段が現れた。  階段をしばらく進むと小窓が空いたドアが現れた。  小窓の奥の男が口を開いて言い放った。 「お前ら、敵だな」  えっ、まさか俺らが敵だって認識されているのか。 「えぇ、そうよ」  レティアがそう言うと、ドアが開いた。 「どういうことだ。なんで敵か聞かれてイエスで答えたのに普通に中に入れるんだ?」 「仲間の中での暗号よ。敵か聞かれて素直に敵だって答える敵は居ないわよ。居たとしても、そこまで覚悟が決まった奴ならこんなドア、あってもなくても変わらないだろうからね」  そりゃそうだ。敵なら仲間に紛れて潜入したいはずだからな。 「ご無事でなによりです、レティア様。それで、何者ですか? その女性とその背負われてる少年は」  廊下の奥に居た男はレティアの顔を見るなり駆け寄ってきた。 「少年って……俺は小さいかもしれないが20歳だぞ」 「そうか、それは失敬」 「この人たちに助けられたのよ。しっかりもてなして」 「了解です」 「それと……」  レティアは男の肩を引き寄せて耳打ちした。 「急いでね。1分以内」 「わかりました」  男は急いで廊下を走っていき、仲間を呼び寄せて仕事にかかった。  なんの話だったんだ。そんなに急がないといけないことなのか。  ドアの奥に入ったところでレティアが振り返り、両手を広げた。 「ようこそ、カミツレの基地に」
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