レティアの過去

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レティアの過去

 コッコッコッ……部屋のドアがノックされた。 「レティアです。話を聞いても良いかしら」 「あぁ、入って良いよ」 「ありがとう」  レティアはゆっくりと部屋に入って来た。  レティアは俺が椅子にくくりつけられているのとレティアがうずくまっているのをじっと見た。 「何で縛られてるの? 喧嘩でもした? それか、そういうプレイか」  はたから見ればそう見えるのか。 「違うよ、ただのズレ防止だよ」 「ふぅん、そういうことにしとくよ」  本当にただのズレ防止なんだけどな。 「じゃあ、早速本題に入るよ」  レティアは空いている椅子に座り、真剣な顔つきになった。 「シアさんの剣の姿がセルナスト王国の失われた碧眼の聖剣、アングレディシアに似ていると思ったのだけど。それはなぜ? 偶然かしら、それとも何かあるのかしら」  シアは体を起こしてレティアを睨んだ。 「紫ちゃん、あなた何でアングレディシアを知っているの? アングレディシアは機密事項で、一般人には知らされていないはずだけど」 「質問に答えてくれてないけど良いわ。私はセルナスト王家の人間だったから、建国当時の資料を見たことがあったの。アングレディシアは、セルナスト王国の初代国王が隣国で最強と言われた剣士ペルドラ・ヘンドレナに勝利して譲り受けた剣」 「セルナスト王家? それなのに、反乱軍を?」  セルナスト王家、それなら俺の敵なのか。いや、反乱軍のリーダーってことは敵ではないのか。  それに、シアが負けるなんてそんなことが……。 「私は現王ヴァレリア・ド・セルナストリアの姪なの。私の本当の名前はレティア・ラ・セルナストリア。普段は父親のフレスタ姓を名乗っているけどね。私の母親は現王の妹。前王である私のお祖父様が生きていた頃、血の気が多い伯父様は王位継承第二位で、お母様が第一位だった。お祖父様が死んだ時、伯父様はお母様を殺して王となった。そしてそれを批判したお父様も殺された。その時、私は12歳だったわ。友達だと思っていた人たちもみんな伯父様の側について私を追いやるようになった」  レティアの悲しみが言葉の節々から感じる。 「それからは国はもう滅茶苦茶。伯父様は国のことなんて何も考えていない。他国と戦って、権力を強めてお金を集めるだけよ。私にはお父様とお母様が愛したこの国を平和にするという使命がある。だから私は現王、ヴァレリア・ド・セルナストリアを殺すって決めたの。それから宮殿から逃げ出して、現王を憎んでいる人を探してカミツレを作った」 「レティアも、家族のために……」  レティアは俺に似ているのかもしれないな。 「そういうあなたもそうみたいね」 ====================  俺は俺の村がセルナスト王によって滅ぼされたこと、四肢が動かなくなったこと、シアのおかげで動けるようになったこと、セルナスト王を殺すことを決めたこと、などを話した。 「へぇ、あなたも苦労してるのね」 「まぁな」  レティアだって苦労してるのかもしれないが、他人に自分の苦労を軽々しく言ってもらいたくない。  なんだかレティアの言うことが鼻についてしまう。心の中で嫌ってしまっているのかもしれない。 「話を戻すわね。シアさんはアングレディシアとはどういう関係なの? シアさんは本当は剣だって言ってたけどシアさんがアングレディシアだってことだったりするのかしら」  何も言わずにそこまでわかるのか。 「だったら何? 宮殿の宝物庫に戻れとか、王家のあなたに使われろとか言うのかしら」  シアは珍しくかなり喧嘩腰だ。 「そういうことじゃないわよ。ただ、私たちに加わってくれればかなりの戦力になってくれると思っただけよ。シアさんは知ってるかもしれないけど、セルナスト王は代々赤眼の聖剣を継承するの。その名もソルデフィオ。伯父様もソルデフィオを使いこなしてる。聖剣の中で最も強いと言われているわ」  こいつ……シアの前でシアよりも強い聖剣なんて言うなよ。王家生まれだから気持ちを汲み取ってもらってばかりで、他人の気持ちを汲み取れないのか。 「知ってるよ、私に勝った剣なんだから」 「シア、ソルデフィオと戦った時にも意識があったの?」 「無かった。でも人格を持つようになってから、私の中に記憶が積み重なっているのがわかった」  それなら、ソルデフィオにもシアとの記憶が残っているってことなのか。 「今思い出しても悔しいよ。でも、確かに強かった。赤眼の能力は空間操作。一定空間の中で瞬間移動をしたり、物体を消滅させたりできる能力だよ」  そんな能力を、セルナスト王が……。 「圧倒的で、私では全く刃が立たなかった。でも、レクロマと一緒に戦う時は違う。私を使いこなせる人を見つけたから」 「買い被りすぎだよ。俺はそんな──」  シアは俺にそれ以上言わせず、食い気味で被せて来た。 「レクロマ! ……私、負けず嫌いなの」 「……あぁ、必ずシアに勝たせるから。俺がシアを最強にしてやる」  レティアはジトっとした目で俺を見てきた。 「私のことも忘れないでよ。手を組まないなら私はあなたたちのライバルなんだから」 「……はいよ」 「はい、だけで良いの!」  レティアはそう言って顔をくしゃっとさせて笑う。  レティアは椅子から立ち上がって俺とシアの手を取って重ねた。 「必ず勝とうね」  レティアは士気を高めるように真面目な顔になって俺とシアの目を見る。 「あぁ」
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