リレイの力、リレリック

1/1
前へ
/75ページ
次へ

リレイの力、リレリック

 エデルヴィック宮殿に着くと、リレイはその迫力に圧倒されていた。 「すごい……何もかも規模が違う」  リレイはゼルビアに連れられて王宮内の医療所で検査を受けたが、魔法の影響をほとんど受けていなかった。  やはり、非常に優れた魔力耐性だ。この子はきっと強くなる。  その後、リレイはゼルビアと共にセルナスト王に謁見をすることとなった。 「君が、リレイちゃんだね。私はこのセルナスト王国の王、ヴァレリア・ド・セルナストリア。君の村は残念だった。でも、君は生きてる。これからはこの王都で暮らすといい」 「ありがとうございます……ありがとう……ございます……」  リレイは今までの恐怖と不安から一気に解放され、涙が溢れ出した。 「しばらくの間はゼルビアを頼ってもらうが、私のことも父親のように思ってくれて構わない」 「そんな……恐れ多いです。私ごときが陛下のことを父親なんて……」 「私には君より年上の息子がいるんだが、一度寝顔を見たきりで、話した事もない。息子とどう接していいのかも良く分からないんだ。だから、その練習と言ったらなんだが、君には娘のように接したいと思っているんだ」 「それなら……こちらこそよろしくお願いします」  リレイは、私を安心させるために言ってくれているんだろうと思っている。 ====================  リレイは、王都での生活が落ち着いた頃、セレニオ村に帰ってみることにした。  桔梗は枯れ果て、人々の腐臭が漂っている。 「酷い有様、私以外は誰も生きていなかったってこと……? 一体誰がこんなことを……許せない」  リレイは畑に深く穴を掘り、亡くなった村人を埋めていった。 「レッ君とメルちゃんだけがいない。どこにいるの?」  リレイは微かに残された可能性を信じようとしたが、それは自分の中で打ち砕かれた。 「レッ君とメルちゃんがあの時、村を出ていて生きているのなら、墓をもう作ってくれているはず……レッ君は優しいから」  私、一人だけ残っちゃったんだ…… ====================  それから頻繁にセレニオ村に戻ったり、辺りを捜索したりしてみてもレクロマとメルの痕跡は全くない。 「何で……何でどこにもいないの?」  リレイは膝をついて涙を拭った。  心の中に、ある最悪な可能性が浮かび上がってしまった。 「まさか……二人が村を破壊して……」  リレイは思い切り拳を握って地面を叩いた。  許せない……必ず殺してやる。  リレイは髪を留めていた髪紐を引きちぎって捨てた。 「あぁ……ここにゴミを捨てたら村が汚れてしまう」  リレイは髪紐を拾ってレクロマの家に歩いて行き、ドアを開いてゴミを投げ捨てた。 ====================  リレイはゼルビアの元で魔法を学んだ。リレイは、特に物体操作魔法を極め、その技能は早くもゼルビアを超えていた。ゼルビアはリレイを騎士団に入れず、陛下の未来の側近として据えるつもりでいる。 「さすがだよリレイ。余りある才能、更にそれを超える努力によって、もう君を止める者はいない。どんなことだって成し得る」 「陛下とゼルビア様のおかげです。お二人が私を救っていただいたからこうして自分を伸ばしていける。それに、しなければならないことを見つけましたので」 「そうか、自分の意のままに生きるといい。君にはその力がある。そこで……実は君に陛下からプレゼントがあるんだ」 「え? 私に……ですか……」  リレイは遠慮しつつも、心を躍らせていた。  陛下の書斎に入ると、陛下は黒い鞘をリレイの腰に取り付けた。 「陛下、大変光栄なことですが……私がいただいてよろしいのでしょうか」 「私の掌中(しょうちゅう)(たま)の成長のために必要な物を与えることは親代わりとしては当然だよ。遠慮する必要なんてない」  陛下は書斎の奥から、黒い剣を両手で持ち出してきた。 「この剣はリレリック。魔力を吸収することができる効果がある魔剣だ」  黒いながらも、深く光り輝く美しい剣。 「こんな素晴らしい物を……私に……」  陛下はリレイの腰の鞘に差し込んだ。 「私は努力家が好きなんだ。才能の限界を自分の力で乗り越え、無限の可能性に満ちている。君はとても努力家で、どんな才能よりも美しい……頑張ってくれ……」 「はい、必ずや陛下のために私の力を尽くします」 *************
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加