7. エピローグ

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7. エピローグ

 それから1週間後の会社の帰り。  をもらってから、幸樹は初めて花園生花店に寄った。  そこで、思い切って、なつみをデートに誘った。  急かと思ったが、なつみは喜んでOKしてくれた。  さらに2日後の日曜日。 「まだ、ちゃんと答えを聞いてませんが」  横浜の大観覧車の中で、なつみが笑いながら訊いてきた。 「え?何のでしょうか?」 「とぼけないでください」  二人は笑い合う。  でも、その答えらしきものは、一昨日、花園生花店で伝えていた。 「あの夜は、寄り添ってくれてありがとう」  その時、なつみはただ微笑んで頷いただけだったが、十分に伝わっていたはずだった。  その後、今日のデートに誘ったのだった。 「それなら……」  と、今度は幸樹が訊く。 「僕もまだ答えを聞いてませんよ」 「え?何でしょう?」 「とぼけないでください」 「え……?」  なつみが、キョトンとした目で幸樹を見ている。それを見て、恥ずかしそうに幸樹は笑いながら、 「なんて、嘘です。質問はこれからです」 「えー、なに!意地悪ですね、千葉さん」  言いながら、なつみも楽しげに笑って、 「では、質問って何でしょう?花言葉なら、だいたい分かりますけど」  得意げな表情をしてみせるなつみを、幸樹はじっと見つめる。  何かを感じたなつみも、幸樹を見つめ返す。  その大きな瞳に、幸樹はハッキリと言った。 「僕と付き合ってください」 真剣な口調の幸樹の言葉に、なつみは、ひとつ深呼吸をすると、 「はい。よろしくお願いします」 微笑を携えて応えた。  観覧車は、ちょうど最高地点にいた。  二人はしばらく、余韻に浸るように、静かに景色を眺めていた。  1年後。  幸樹となつみが暮らし始めた部屋。  出窓では、青色のの花が咲き誇っている。  いつとは決めていないけれど、ゆくゆく結婚するだろうと、幸樹は思っていた。  プロポーズする時も、結婚する時も、傍にはが寄り添ってくれている気がする。  その時は決して、悲しいのではなく、 『幸せな二人に寄り添う』  という意味で……。             (完)
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