じはんき、じはんき。

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 ***  さて、私達がどの山に登ったのかについては――申し訳ないが、ここでは伏せさせてもらおうと思う。  というのも、先生いわく“こういうのはどこの山でも起こり得ること”らしいからだ。特定の山の名前だけ書くことによって、その山以外なら大丈夫だと人に思わせる方がまずいらしい。これは、私も同意見である。ついでにちょっとした風評被害にもなりかねないので、ここでは●●山と記載させてもらうことにする。  なお風評被害というのはこの山で起きた出来事もそうだが、麓の宿で出たご飯が非常に美味しくなかったから、というのもあるのだった。  この林間学校は、二泊三日。山登りをしたのは一日目と二日目で、三日目はほぼ帰るだけだった。つまりそれだけの日数分その宿で食事をとったのだが、これがまあ、なかなかアレな味だったのである。――あれから二十年以上過ぎたが、あの宿はまだやっているのだろうか。正直、子供たちの林間学校でもなければとても経営が成り立たないと思うのだが。  まあ、それはさておき。  一日目と二日目で違う山に登ったのだが――一日目は、特にトラブルは何も起きなかった。山登りをして、夜にキャンプファイアーをして、緊張はあったけれどなかなか有意義な時間を過ごし多様に思う。  事件が起きたのは、二日目の山登りのこと。  ちなみに、一日目と二日目で登った山は違う名前がついていた、と言っておく。登山コースも違っていた。小学生が登るような山なので、きっとハイキングのお隣さんのような初心者コースだったのだと思うのだが。 「今日は、頂上でお弁当を食べる予定です。十二時までに到着するように、皆さん頑張って登りましょう!」 「はーい!」 「他の登山者の方とすれ違うこともあります。きちんと挨拶するように。それと前の人を見失わないように、離れないように、しっかりついていきましょうね」 「はーい!」  ちなみに、さっきちらっと言ったが、この話は私が小学生だった時の頃のこと――二十年以上昔のことである。当時はまだまだ小学生が携帯電話なんて持たされていなかった。ていうか、大人にもさほど普及していなかったのではなかろうか。  つまり、はぐれたら連絡を取り合う術がない。私達は先生を先頭としんがりに置いて、一列になって道を進んでいったのだった。その日はいい天気で、なかなか蒸し暑かった。このあたりでは昨日の夜雨が降っていたようで、地面がじっとりと湿っている。ぬるぬるした土で時々スニーカーが滑って、飛び出した木の根で躓きそうになることもしばしばだった。
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