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「お、おっとと、とととと」
「秋ちゃん、大丈夫?」
「ご、ごめん雪奈ちゃん。大丈夫……」
で、私達のグループはといえば。
丁度真ん中くらいの出発順だった。ただ、私を含めちょっとどんくさい女の子が多かったこともあり、やや前の班からは遅れ気味だったのである。雪奈ちゃん一人なら問題なくついていけただろうが、彼女はけして体力がないメンバーを見捨てなかった。私達と一緒に、ゆっくりと歩いてくれたのである。
雪奈ちゃんに励まされながら私達五人の班は山道を進んでいく。時々カラフルなキノコを見つけたり、インスタントカメラで花の写真を撮ったりしていた。もちろん、前の人達からは遅れないように、なるべくついていけるよう心がけながら。
ところが。
「あれ?」
角を曲がったところで、私達は茫然と立ち尽くしたのである。山頂はこちら、と書かれた看板は右を向いていた。少し小さくなっていた前の班の男の子の背中も、確かに右へ曲がっていったのを見ている。にも拘らず。私達が右へ曲がったら誰の姿もなかったのだ。一瞬、道を間違えてしまったのかと思ったほどに。
「間違えた?」
「や、こっちに曲がるの、あたしも見たぜ」
困惑する私に、雪奈ちゃんはあっけらかんと言う。
「だいぶ見失っちゃったかな?……まあ、あとは一本道みたいだし、なんとかなるだろ。先に進もう。あ、それともちょっと疲れた?」
「あ、うん……まだ大丈夫、だけど」
まっすぐ上へ続く坂道が続いている。いつの間にか周辺の木々の葉が紫色がかっていて、少し不気味だった。でも、確かに他に分かれ道はない。右へ曲がっていくのも見ている。歩いていけばいずれ追いつけるだろう、とそう思っていた。
ところが。
「ねえ……なんかおかしくない?」
班のメンバーの一人がそう言った。
「前の人になかなか追いつけないのはわかるよ?わたし達、歩くの遅いし。でも……どうして後ろの人も来ないの?」
「…………だよね」
それは、私も変だと思っていた。
雪奈ちゃんが私達にあわせてスローペースを守ってくれるので、前の子たちから離されてしまうのは理解できる。姿が見えないほど遠くなってしまっただけだろうと、最初はそう思っていた、でも。
私達は、最後尾ではなかったはずなのだ。
後ろからは別の班が来ているのだから、彼等がそのうち追いついてくるはずだった。しんがりには別の先生もついてくれている。実際、少し前までは振り返ったら彼等の姿があったはずなのに。
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