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「物も気持ちも、大抵はすぐ届けられる現代。その利便性は、早く届けたいという想いが育て上げたものなのかもしれません。
こんばんは。変な話のお届け人○○●●です。やって参りました【小説投稿コンテスト】三行から参加できる超・妄想コンテスト第226回「届けたい○○」ということで今回のテーマは、「届けたい○○」です。
筆者に作品について聞きましたので、以下にご紹介します。
【今日は2024年8月11日(日)。お盆の準備で忙しい時期に、皆様へ変な話をお届けします。え、忙しくて読んでいる暇がない? そうですか、それもそうですね……私も、書いている時間がないんですよ。どうしましょう? そうだ、お盆に帰省しなければいいんだ! でも、墓参りをサボるのも、何となく気が引ける……こっちから行くんじゃなくて、向こうから来ればいいんだ! 呼び寄せるんですよ、あの世から、霊魂を。そんな思いを込めて書きました! これを読んだら、祖先の霊とか、そうではない霊とか、いっぱい来ますよ! お楽しみに!】
変な話だけを書く筆者からの前説は、これぐらいに致しまして、ここから本編です。え、続きを読みたくないのですか? 怖い話は苦手ですか? そうですか。それは残念ですね。実は最後まで読まないと……いえ、何でもありません。どうぞどうぞ、お好きになさって下さい。それでは読み続けるという皆様、続きをどうぞ」
・突然家を訪ねてきた男が持ってきたのは、幼い頃に亡くなった姉のボトルメールで――。
男は私にボトルメールを差し出した。
「どうぞご覧下さい」
幼い頃に亡くなった姉が書いたボトルメール――そこに、どんなことが書かれているのか? 私は震える手で手紙を受け取った。
そこに書かれていたのは……まさかのラブレターだった。
「あの……これ、ボトルメールではなくて、ラブレターみたいなんですけど」
ニコッと笑って男は言った。
「申し遅れました。私は依頼成功率100%の凄腕運び屋でして」
・依頼成功率100%の凄腕運び屋。そんな彼に預けられたのは、まさかのラブレターで?
「ボトルメールでラブレターというのは珍しくないのですよ。ただ、それが相手に届く確率は限りなくゼロに近いわけで。たまたま拾ったのが私だったから良かったのです。お姉様からのご依頼は、確かに承りましたから」
姉が流したボトルメールを拾った男は、偶然にも依頼成功率100%の凄腕運び屋だったようだ。それは分かったが、疑問がある。
「この手紙を届けるのは、私のところではないでしょう? どうして私のところへ来たのです? 姉が届けたかった相手に、どうか届けてやってください。お願いします」
私は男に頭を下げた。男は困った顔で言った。
「その相手なのですが……ちょっと届けるのが面倒な場所にいるようで」
「届けるのが面倒な場所? そこは何処なんです?」
「この世界ではない場所へいるようなのです」
「は?」
「はっきりした場所は特定できませんが、おそらく別の次元を彷徨っているのです」
男は私から、ほんの少し視線を逸らして、二枚目のボトルメールを差し出した。
「ここに書かれた名前を、ご存知ですね?」
知った名が見えた。しかし、知らない振りをする。
「どなたなのか、分かりません」
男は首を左右にゆっくりと振った。
「いいや、あなたはご存知のはずだ。調べはついています。ここに書かれた人物を、あなたは知っている」
・もう何十年も前のこと。けど私はどうしてもあなたに届けたい……この恨みと、復讐の刃を。
そう、私は、ここに書かれた人物を知っている。姉を不幸のどん底に叩き込み、私たち家族の幸せを壊した、この人物を確かに知っている。そして、その人物が今、何処へいるのかも知っている。
だが、それを男へ告げる気にはなれない。
「申し訳ございません。私には、何が何やら、さっぱり分かりません」
男は苦く笑った。
「その人物は、荷物を宅配する業者ですね。それを知っているあなたは、呪いのかかった荷物を、その人物に配達させることにした。作戦は大成功。荷物の呪いのせいで、その人物は異世界へ入り込み、出られなくなっている。今も、その世界にいるのでしょう? 何度訪れても不在の家に荷物を届けようとして」
その通りだった。しかし、正直に真実を伝える気にはなれない。
「あなたのお話は、まったく分かりません。どうぞお引き取り下さい」
男は立ち去り際に言った。
「これで依頼成功率100%ではなくなってしまいました」
寂しそうに言う男に、私は言ってあげた。
「姉は依頼料を払っていないのですから、ノーカウントにしたら……いや、ご迷惑料を私が支払います。この額で、どうでしょう?」
男は私が渡そうとした金を受け取らなかった。
「受け取ってしまったら、契約が成立します。どうかお納め下さい」
そして姉が流したボトルメールすべてを私に渡した。
「これで全部です。それにしても……あなたの仕掛けた罠に、まんまと嵌まったのが、私でなくて良かった」
受け取ったボトルメールの全部を読み、姉と両親の位牌が置かれた仏壇に供える。手を合わせる。呟く。
「私は間違ったことをしていないよね? これで良かったんだよね?」
死者たちからの返事はなかった。
・何度訪れても不在の家……この荷物はいったいいつになったら届けられるんだ!?
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