定年後に届いた贈り物

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 じょきじょきとハサミで封を切ると封筒から中身を取り出す。中に入っていたのはペラペラの白紙の紙。 「何も書かれていない?」  あたしが呟くと、夫は封筒を逆さまにして奥のほうに入っていた物を手に持つ。 「淳子さん、部屋を暗くしてください」  カーテンを閉めて、部屋を暗くして再び夫の隣に膝をついて座る。  カチッとスイッチを押した音がして白い紙にライトを照らしていく。 「これって」 「昔、流行っていましたよね。見えないペン」  見えないペンで書くほどの内容。やはりあたしは見ては行けない気がして立とうとした。 「淳子さんも知っている人だから」  夫の言葉で再び座り直したあたしは照らされた文字を読みはじめていく。
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