言えないままで

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言えないままで

倉橋勇夫さんへ  知的なあなたならこの白紙の文章を読む術をすでにわかっていると思いましたが、ブラックライトを同封しておきます。 「優しいところは変わりないな」  砕けた口調に戻っているのは友達だから、そう言い聞かせあたしは照らされていく文章へと集中させた。 *  倉橋はずっと独り身でいるのかと思っていました。町が主催した町コンで知り合った人と結婚するなんてと寂しい気持ちになりました。 「あたし恨まれてるのかしら」 「さぁ、どうでしょう?」  夫は冷静にライトを当て続けていく。あたしも知っている人って?  そうしてまた夫の横顔から白紙の紙へと視線を移し替えて読み進めていく。
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