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「この前、帰って来た彼の服から女性ものの香水の匂いがしたり、あと知らない女性からの着信も。私がただ変に勘違いしてるだけかもしれないのは分かっているんですが、一度考えてしまうと不安で。不安で」
手に覆われた口元から聞こえてくる涙声。
「ちゃんとそうじゃないって安心したいんです。そして今を支え合っていつの日か――」
さっきまでとは一変しそこにあったのは未来への希望に満ちた笑みだった。まるで結婚前夜の花嫁のようなウエディングドレスにも負けない華やかな笑顔。
「でも浮気調査って七割ぐらいアウトなんですよね」
ただのデータを口にしただけ、スカリにとってはなんてことない事を言っただけ。しかしその数字は残酷に彼女の心へ突き刺さった。
「……そうなんですか」
顔を俯かせ最悪の結果を聞いたような表情を浮かべた。
「ま……まぁ、私の数少ない経験ってだけですから。それに三割って場合も全然あるし」
今にも泣き出しそうな吉川に対しスカリは少し慌てながら言葉を並べた。
「だ、だからまぁ。まずは調査してみないと」
「はい。よろしくお願いします」
先に顔を上げた吉川は静かに再び頭を下げた。
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