14

1/1
前へ
/29ページ
次へ

14

 そう言われた真壁はゆっくりと顔を上げた。そしてサングラスを外すとニヤついてるようにも見えるスカリと目を合わせた。 「俺は組を抜けるつもりです。その交換条件の仕事を最近はしてて、今回が最後の仕事なんです」  真壁はバッグをテーブルに置くと、そのままスカリの前へと滑らせた。それを手に取ったスカリはチャックを開け中を覗いた。バッグの中身は、一丁の拳銃。 「これが終われば俺は堅気になります。そして光里と……」 「三割って意外と引けたりするもんなのか」  チャックを閉めたスカリはバッグを真壁の前へ。 「でもこれって鉄砲玉ってやつなんじゃ? 下手すりゃ死ぬんじゃない?」 「そうなるかもしれない。――けど、俺は鉄砲玉にはならない。必ず戻って正々堂々と光里に――」  それはブレる事のない強く硬い決意の眼差しだった。 「プロポーズする」 「ふーん。断られたら?」  そんな鋭い一刀が返ってくるとは思ってなかったのか、真壁は意表を突かれた様子だった。 「そ、それは……」  片手で顔を覆い脳裏では考えても無かった想像が行われているのだろう、少し間を開けてからガグッと顔を落とした。 「……泣く。かもしれないです」 「うん。なんかゴメン」  そこまで悪気のなかったスカリだったが、予想外に言葉の刃となった事に申し訳なさが込み上げる。 「でももしそうなったとしても構いません。彼女にはちゃんとしてから言いたいんです。嘘の事も全部。後めたい事が無くなってから俺の想いを伝えたいんです。それでもし駄目だったとしても構いません」 「愛だねぇ」  揺るぎないそんな心を目の前にスカリは感慨深そうに呟いた。 「決行は明日。標的はブラード組の組長。――もし失敗したら」  真壁の逸らした視線は一度バッグへ向き、それからスカリへと戻った。 「その時は浮気相手とどっかに逃げたって事にして下さい」 「考えとく」  * * * * *
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加