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 ハングリーフルへやってきたのは須藤。彼は席に座りながら注文をした。 「あー、んじゃ刺身定食」  ルエルは注文を聞くと流れるように料理を作り始めた。 「あれ? 須藤さんじゃん。お疲れー」 「ちゃんと働いてっか?」 「はぁ? 今日、無償で働いてあげたじゃん」 「あれか。あれは楽させてもらった。まぁ、あの程度なら面倒にもならんがな」 「そう言えばあれってどっちだったの?」 「デビラ―だな。どうせ下級だろ」 「ふーん」  唸るような返事をしながらスカリは白身フライを一口。サクッと触感だけで白米を食べられそうな衣と肉のような白身、オリジナルのタルタルソースと手を取り合い口の中では舞踏会が開かれた。 「ほらよ」  言葉と共にカウンターの向こうから雑に渡された刺身定食。お膳の上には五種の刺身と汁物、小鉢と白米が乗っていた。 「そういやお前さん。明日は暇か?」 「全部奢ってくれるならいいかなぁ」 「何の話だ? だが、間接的に奢ってやる」  そう言って須藤は懐から少し太った茶封筒を取り出し彼女の前へ。 「依頼だ」 「そう言う事なら」  スカリはその封筒を中身は確認せずにそのまま懐へ。 「最近だが少し派手にやってる詐欺グループが潜んでる場所が割れたらしくてな。その事務所を不意打ちする」 「そういうのは二課の仕事でしょ? あっ、でも須藤さんに回ってきてるってことは犯人はコントラクターか」 「最近は忙しいらしくてな。可能性とかいう体で回してきやがった」 「事件を盥回しにしてんじゃねーよ」  カウンター越しにお玉を突き付けるルエル。 「ちゃんと解決すりゃあいーんだよ」 「刑事さんはお忙しいんですね」 「コントラクターも増えてるからな」 「契約を交わした悪魔か天使は生きてる限り別の人間と契約を交わせば良いだけですからね。数は減りにくいですよね」 「そいつらが大人しくしてくれてりゃ何の問題も無いんだがな」  今にも溜息をつきそうな表情のまま須藤は定食へ箸を伸ばした。
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