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 翌日。スカリは古びたビルの前に立っていた。どんよりとした鉛色の雲が頭上を覆い尽す中、彼女は電話を一本。 「もしもし。着いた」 「様子はどうだ?」 「別に。ただの空きビルって感じ」 「そういう体だとは言ったが、本当にコントラクターの可能性もある気を付けろよ」 「それ必要ある?」 「人間の場合、間違っても殺すなってこった。怪我も軽いのまでだ」 「はいよ」  通話を終えたスカリは早速、狭いビルの階段を上り始めた。交互に鳴り響く足音の先――彼女を迎えたのは右手の冷たいドアとその前に立つ二人の男。 「おい。止まれ」  階段側の男はスカリを見るや否や静かに言葉を口にした。落ち着き払った余裕は警告的で力を誇示しているようにも捉えられる。  だがスカリは一定の調子で階段を上り続けた。 「Frågade du efter yangnyeom-kyckling?」  流暢な外国語を口にしながら状況を理解出来てないと笑顔を浮かべる彼女は、また一歩と階段を上がった。 「何言ってやがる?」  すると階段を上り切ったスカリに対し男は銃を抜き、額へ突き付けた。 「失せろ。言葉が分からなくてもコイツは万国共通だろ」 「Lagomärbäst」  スカリは満面の笑みから不敵なものへと変えると、一瞬にして銃の手を払いそのまま壁へ叩き付けた。先手を取った彼女は後方で遅れながら銃を抜いた男を一瞥し、手前の体の陰へ潜り込んだ。
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