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 そこからほんの数手で男は無力化。それは壁に叩き付けられた銃が地面に落ちるまでの間で起きた出来事だった。更にその間も向こう側の銃口は仲間の背中を見つめ続けていた。  そして気絶した男が地面に倒れるより先、スカリはもう一人の男を目掛けてその体を蹴り飛ばし――同時に接近。陰から飛び出すと引き金を引く暇すら与えぬ間に地面へと伏す事となった。 「さてと、中には何人いるのかなぁ」  微かに言葉を躍らせながらスカリはドア前で立ち止まるとノブへ手を伸ばした。しかし目前で止めると手を引いた。  そして片足が上がると――ドアを蹴破った。 「よーし。警察だー。全員手を上げろぉ――ってこれは詐欺罪になるのかな?」  だが彼女の目に映ったのは人っ子一人いない部屋。  ではあったが、そこには不自然なブルーシートが小山を築いていた。ゆっくりと近づいた彼女はそっとブルーシートを捲った。 「これは……」  青の下で眠っていたのは雪のように真っ白な粉が詰まった袋の山。 「どうだった?」 「ドア前に二人。中は無人――いや、可愛い子ちゃん達が一杯かな?」 「不法移民か? 誘拐か?」 「いや、そうじゃなくて。薬物っぽいやつを見つけたって事」 「ヤクだと? 直ぐに警官を送る。お前さんはそこでその可愛い子ちゃんってのを見張ってろ」 「はいよ」  スマホを仕舞ったスカリはぐるり辺りを見回した。長い間、使われた痕跡のない空き部屋とすっかり役割を全う出来なくなったドア。それだけ。 「はぁあ。壊さなきゃ良かった」  そうボヤきながら彼女はドア横に腰を下ろすと壁へ凭れ掛かった。
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