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 それから約十分後。狭いビル内へ階段を上る音が響き渡った。複数の足音と雑談する声。だがそれは直ぐに一変した。  一瞬にして警戒態勢に入っただらりとしたスーツ姿の男五人組はドアの無くなった部屋の中へ。無人の室内に入り込み辺りを警戒で埋め尽くすが、ドアが壊れ見張りがやられている以外に異常はない。ブルーシートに隠されたブツも。  交戦は疎か全てが無事――五人はほぼ同時、暗黙的に安堵した。  その時、それとすれ違うように一番入口と近い一人の頭上から影が舞い降りる。地面着地までの間にまず一人。脳天に振り落とされた悪魔のようなひと蹴りは男を地面に沈め、スカリはそのまま上に舞い降りた。まるで天使のように。  そして後方の音に全員が振り返った。 「何もんだ!」  続けて一人の男が叫ぶ。  直後、返事の代わりに鳴り響いた音と共に三人の成人男性の体が飛んだ。一人に対して一撃。だが瞬く間に四人を転がしたスカリの前に残ったのは、壁の傍に立つ他より一回り大きな体の男だった。
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