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 それから再び壁に凭れながら警官の到着を待った。スマホを片手にただただ待ち続けること五分。無事に気絶した七人の男と薬物を警察に引き渡した彼女は、スマホを耳に当てたままビルを出た。 「これだけでいいの?」 「あぁ。拠点候補の一つで一番の外れかと思ったんだがな。思わぬ収穫――じっとしてろ!」  須藤の声が少し離れたかと思うと怒声に加え、何がぶつかる音と更に遠くから堪え切れない声が弾けた。 「悪い。どうやらこっちが当たりだったみたいだな」 「それじゃあ今回の依頼は終わり?」 「ご苦労さん」 「えぇ~、こんなんであの報酬貰っちゃっていいの~?」  その口調は笑み同様に少し蕩けていた。 「なんだ。まだ見てないのか?」 「え? どーゆーこと?」 「いや、何でもない。とにかく助かった。また何かあったら頼んだ」 「いつでもご利用お待ちしておりまーす」  やけに明るく営業的な声を最後に通話を終え、彼女はその場を離れた。  * * * * *
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