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 公園の一本の木を背にしたベンチへ豪快だがまるで等身大の縫い包みのように脱力し座るスカリは、 「はぁー」  聞こえてくる子ども達の活気溢れる声とは相反した大人な溜息を零していた。 「あのくそジジイ」  更にそう曇天へ呟くと顔を戻し、脚の上に置いてあった茶封筒を手に取った。そして再度、中身を引っ張り出す。  茶封筒から出てきたのは札束。しかしそれは全て千円札だった。 「めっちゃオイシイ仕事だと思ったのに! 昨日見てたらとんずらしてたわ」  愚痴を吐き捨てながら札束を戻した封筒を仕舞った彼女は、声交じりの溜息を追加で零し心を映し出したような曇天を見上げた。  するとそんなスカリの隣へ誰かがそっと腰を下ろした。その気配に顔だけで横を見遣る。そこには依頼人である吉川の姿があった。 「突然すみません。偶然、見かけたもので」 「いえいえ」  そう言いながらだらけた姿勢を正す。 「あの、調査の方はどうでしょうか?」 「別にサボってる訳じゃないですよ?」  揶揄う微笑みを浮かべるスカリに対し、遅れて吉川の表情も和らぐ。 「今のとこはまだ断定する事は出来ないですね」 「そうですか」  笑みの余韻を残しながらも同時に不安げな吉川は少しばかり顔を俯かせた。
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