24

1/1
前へ
/29ページ
次へ

24

「何か秘密があるだなんて考えた事も無かったです――ってまだ決まった訳じゃないですけど」 「今回がどうかは置いておいて、誰にだって秘密はあるもんですよ。あなたにも一つぐらいあるんじゃないですか?」 「秘密ですか……」  呟きながら僅かに俯かせた顔は頭上と同じで曇り模様。 「神速さんにもあるんですか?」 「そりゃまぁ。良い女に秘密は付き物ですから」  スカリはそう言いながら軽く髪を掻き上げ彼女なりの良い女を演じて見せた。それを見た吉川はクスっと一足先に太陽を覗かせた。 「確かにお仕事的にも秘密は多そうですね」 「人には秘密がある――そして時にその秘密を暴くのが探偵、神速スカリ」  スカリはキメ顔でそう言った。どこかの物語の登場人物のように。 「改めてよろしくお願いします」 「調査がまとまり次第報告するので待ってて下さい」 「はい」  会話が終わり、静けさに包み込まれた二人はそれぞれ視線を正面へと移した。どちらかが立ち上がりそのまま別れてしまいそうな沈黙の中。吉川は微笑みを浮かべながら和やかな声で話し始めた。 「実はここ、私と彼が初めて出会った場所なんです」  懐旧の情に染まった表情は導かれる様に鉛色の空と顔を合わせた。 「今日とは違って雲一つなく、焦がすように照り付ける物凄く暑い日でした」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加