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「それとこれを首とかに」
そしてもう一本を手渡すと、吉川は言われた通りにまず片手で首元にペットボトルを押し当てる。まるで焼け石に水の石になったかのように肌から広がる冷たさは心地好く、思わず口元が緩んでしまう程。
そしてもう片方の手にあるペットボトルからスポーツドリンクを流し込む。喉を潤しながらも胃までを強調するように冷やしてくれるそれは今の吉川にとって魔法の液体と言っても過言ではなかった。
一方で真壁は辺りを見回した後、シャツを脱ぐと軽く扇ごうとしたが直前でその手を止め着直していた。何か他に出来る事を探しているのか少しソワソワとしていたが、結局は素直に隣へ腰を下ろす。
それから体を冷ます吉川を心配そうな視線を浮かべながら見守り続けた。
「ありがとうございました」
救急車を呼ぶ程に悪化する事も無く、無事すっかり元気を取り戻した吉川は座りながら頭を下げた。
「いや、元気になったようで良かったです」
「あの飲み物代を」
そう言ってバッグへ手を伸ばし財布を取り出した。
「全然いいですよ。気にしなくても」
「でも……」
「たった二本ですから」
「そうですか……」
まだ腑に落ちないと言えばそうだったが、余り引き下がらないのも何だか気が引けてしまい渋々と財布をバッグに戻した。
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