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 だが逃げ惑う人の波の中、スカリは平然とした様子でコントラクターを眺めていた。 「あぁーあ。こんな事で暴れちゃって。って――あっ」  するとスカリは思い出したと慌てて辺りを見回した。慌てふためく人々を視線は縫うように確認していく。  しかし追っていた男の姿は消えてしまっていた。 「ってどこにもいないし」  一人別世界にいるかのようにスカリは悠長に溜息を零し、明らかにガクッと肩を落とした。そんな彼女の横を通り過ぎてゆくポーカーテーブル。共に舞い散るカード。スペードのエース、キング、クイーン、ジャック。  そして――弾丸。  テーブルにカードとすれ違った弾丸は空を貫きながら標的へと向かっていく。その直線上にいるのはコントラクター。  だが掴み引き寄せられた別のポーカーテーブルでそれは易々と防がれた。更にその一発を追って来た数発と共に。 「さて。アンタはどっちに賭ける?」  片手に黒を基調とした拳銃を握ったスカリは、銃弾を防がれたのを気にも止めずもう片方の手を軽く伸ばした。
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