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フェイがソレに気づいたのは、気持ちの良い風にのって、上空を移動していたときだった。
南北に真っすぐのびる街道――地を這う異種族である人族が移動を容易くするために作ったモノの上に、細く何か引きずったような跡が延々と続いている。
アレは何だろう? という、他愛もない疑問と好奇心で、ソレに近寄っていったのだ。
フェイはこの世界で幻獣種とされている。
ある日、突然生まれし、力あるもの――始祖と呼ばれる、その種の起源となるものだった。
フェイはその始まりの種の長であり、自身が風と空間を操るもので在ることを最初から知っていた。
今はその身に有り余るほどの力を存分に引き出し、この世に顕現した喜びと共に自由を満喫している最中だ。
ほんの少しの気まぐれから、街道上の跡を巡ったフェイは、しばらくしてその跡の終点を確かめ、その目を見開いた。
ソレは、身も蓋もなく泣きながら這いずる人だった。
その身からはフェイが生まれてから初めて感じるような、強烈な感情――思念を放っていた。
帰らねば、何としても帰り着く……!
間に合わせなければ! ……ああ、日がもうあの高さに。
間に合うのか……、いや、間に合わせる!
さもなくば、リリーが、俺の大事な最愛のひとが、死んでしまう――!
動け、俺の手足……!
例え、折れていても、……早く、一刻も早く、この解毒薬を彼女の元に――!
執念ともいえる想いが波のように次々と伝わってきて、フェイの心を揺らす。
足元のちっぽけな人が生み出す、圧倒的な想いに驚き、フェイは少しだけこの状況に興味を覚え、人の元へと舞い降りた。
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