04.コーヒー豆の分量

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04.コーヒー豆の分量

 コーヒーテストが始まった。事前に準備されたコーヒー豆と器具、そして調理台を使い、ブラックコーヒーを淹れる。最も単純なペーパーフィルターを使って。それがコーヒーテストだ。  コーヒーを抽出するための道具には、布製のフィルターを使うネルドリップや、金属フィルターで粉を漉すフレンチプレスなどがある。けれど、いちばん簡単で安価なペーパーフィルターを使うのは、街のカフェを営む上でそれがいちばん身近な存在だからだ。そうであるからこそ、いちばん難しい技術。  翔太は割り当てられた調理台でコーヒー豆を挽く。自分が修行していた頃と変わらない調理台。けど、懐かしさに浸っている余裕はない。翔太はコーヒー豆の分量を測り、そして慎重に手挽きミルに豆を入れ、ハンドルを握る。学んだ手順どおりに。  そのときふと、京介の視線に気づく。彼はなにか目配せする。「そんなに緊張するなよ」とか、「美味しいコーヒー、期待してるぞ」とか、そんな感じで。
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