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対等な友達ではなかったかもしれない。でもちさとの為に沙菜は誰よりも頑張っていた。その自覚はあった。高校二年の生活も九月に差し掛かった、体育祭が間近に迫った頃、ちさとは絶望的な目をして沙菜にすがった。 「私、リレーのアンカーなんて無理。赤組も青組も陸上部の子たちがアンカーなのに黄組はなんで私。足の早い子を先に走らせる作戦なんだって。でも不安すぎるよ」 「大丈夫、あたしがちさとの前に走るじゃん」 「お願い、助けて」 「任せて。みんなにはちさとのせいで負けたなんて、絶対言わせないから」 「沙菜ちゃん……」 当日、沙菜は黄色鉢巻をおでこに巻いてスタンバイしていた。リレーは全生徒参加型、体育祭の花形競技。学校中の注目が集まるし、保護者に教職員も体育祭の集大成としてリレーを鑑賞している。スタートした。ピストルの音が響き、走者がダッシュする。作戦通り、黄組は速い生徒を前に配置していたのでぶっちぎりで一位を独走中だ。この差をキープしなければならない。しかし、抜きつ抜かれつ、リレーは観客をわかせながら続き、とうとう沙菜の番が来た。 沙菜を待っているちさとからの期待がアドレナリンに作用したのか、ちょうど良い感じの興奮状態になっている自分を冷静に感じ取った沙菜は、いけそうだなと思った。いつだって、ちさとは沙菜を待っている。沙菜はちさとの期待に答えたい。待ってくれる人がいる事で沙菜は何倍もの力を出し切れる。そう、きっと今も。バトンが沙菜に渡った。 沙菜、一位でスタート。あとは全力ダッシュ。沙菜は、ちさとがゆっくり走っても追いつけないように他の生徒に出来る限りの差をつけなければならない。アンカーのちさとへバトンを渡した時にはかなりの差がついていた。ちさとは必死で走ったが、追いつこうとする他生徒が迫ってきて、がんばれ、こけるな、がんばれ、と沙菜は必死に応援した。ほか生徒も彼女に影響されて大きな声で応援し始めた。 ちさと、ちさと、がんばれ! 群衆にちさとコールが沸き起こった。ちさとはなんとか逃げ切って。優勝。ぎりぎりだった。抱き合って喜ぶ沙菜とちさとを黄色チームがみなで祝福してくれた。かけがえのない瞬間だった。間違いなく、思い出に残るリレーだった。 ちさとがいることが沙菜にとっては当たり前で、例えば登山の時に背負っている荷物は二倍だけれど遭難させてはいけないパートナーがいるという意識があって雪山でも眠らず、どんな崖からも生還する火事場のばか力がずっと出ているみたいに、沙菜は頑張ってこれた。疲れるとは思っていた。人の二倍、努力しているような意識はずっと続いていた。だから、ちさとが居なくなったとき、張り詰めていた糸がぷつんと切れた。
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