推しを家で預かることになってしまった

1/1
前へ
/10ページ
次へ

推しを家で預かることになってしまった

「ど、ど、ど、どうして皇くんが こんなところに……」 爆発しそうな心臓を押さえながら彼を見る。 美歩の予言が当たってしまったというの? (予言ではない) 「バレてしまっては仕方がないですね」 悪役のような喋り方をした皇くんは ため息をついた。 「実は、僕、夜逃げ中なんです」 YONIGE? よにげ 夜逃げ…… 「は、はぁぁっ!? なんで、どうして!? 辛いことでもあったの皇くん??」 「ち、ちょっと声が大きいです、変態さん」 「変態じゃねぇわ!わたしは源愛理亜って 名前があるの!」 「あ、す、すみません。」 「えぇーっ、こんなところで皇くんて会えるなんて すごい嬉しいっ!! 実はわたし 皇くんの大ファンでっ!! とりあえずLINE交換しません?」 「迷惑ファンじゃないですか」 ぐっ、とうとう本人にも 美歩と同じことを言われてしまった。 「で、でもなんで夜逃げなんてしようと?」 「実は、メンバー内で喧嘩してしまって……」 皇くんはシュン……と項垂れる。 もしかして、方針の違いとかで 喧嘩しちゃったのかな? グループ解散の危機かも!? それは止めないと! 「どんなことで喧嘩しちゃったんですか?」 「おにぎりの具」 「え?」 「おにぎりの具は梅干し派かシャケ派かで 喧嘩になってしまって…… 事務所を飛び出してきてしまったんです……」 涙目で視線を斜め下に向ける皇くんは 大変麗しいけれども。 ……??? 突拍子もない発言に思考が宇宙まで飛んでいく。 「え? おにぎりの具? そんなことで喧嘩を??」 「……はい」 もしかして、happinessって ポンコツ集団 いやいやいや、そんなはずないじゃん! きっと偶然!たまたまノリでおにぎりの具で 喧嘩しちゃったのよ!(?) 「えーと、とりあえず家に帰るとかは? 皇くん、一人暮らしですよね。 どこ住みなんですか?」 「家には帰れません……」 「え?」 「帰りの新幹線の 切符無くしちゃったんですよぉ!!」 ガックリと地面に膝をつく皇くん。 …… なんだか、皇くんってテレビとは ずいぶん印象が……。 ハッ! もしかして、これってチャンスでは!? 皇くんを一晩家で預かったら 同棲気分を味わえるじゃないの!! 気づくとわたしはこう口走っていた。 「良かったら、今晩はウチに泊まりませんか?」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加