皇くんのこと本気で好きだと今更気づいてももう遅い。

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皇くんのこと本気で好きだと今更気づいてももう遅い。

「皆さん、今までありがとうございました。 本当にお世話になりました!」 皇くんが玄関先でぺこりと頭を下げる。 「気をつけて帰るんだよ」 「ねーちゃん、皇くんの大ファンだろ。 何か言うことないのかよ」 伊月がわたしを小突く。 わたしは視線を上げて皇くんの顔を見つめた。 「皇くん、今までありがとう……。 わたし、この思い出一生忘れないね」 泣きそうになるのを堪えて微笑むと 皇くんも泣きそうになっていた。 もう、何で皇くんが泣きそうなのよ。 ほんと優しくて、可愛くて、推しとして 大好きな皇くん。 だけどわたしの胸に芽生えたのは 推しとは違う感情だった。 わたしはいつしか皇くんの 中身に惹かれていくようになっていた。 ファンと芸能人の恋愛なんか御法度だし、 告白するなんておこがましいこと 意気地なしのわたしにはできない。 「愛理亜さん!僕、まだ話していないことが」 「あらっ!!もう新幹線が来る 5分前じゃないっ!!」 お母さんがスマホの時間を見て声を上げた。 「えっ!! ほんとですか?!」 「皇くん、早く行きなさい!」 「え、あ、そ、そうですね! 皆さん、さようなら! この恩は一生忘れません! あ、来週のライブに絶対来てください!!」 そう言い残し、皇くんは走り去って行った。 わたしの初恋が終わりを告げた瞬間だった。
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