蜘蛛男

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蜘蛛男

 東京のY町に開店した小さな美術商「稲垣商店」の事務員募集広告を見てそこへやってきた里見芳枝は、店長の稲垣平造と出かけたきり、行方不明となる。稲垣の正体は、好みの女性ばかりを誘拐して殺したうえ、死体をもてあそぶ「青ひげ」のごとき殺人鬼だったのだ。やがて、芳枝は石膏像に塗り込められたバラバラ死体となって発見されたうえ、芳枝の姉である絹枝も殺害されて水族館の水槽に浮かべられてしまう。「蜘蛛男」と名づけられた殺人鬼は、次に人気絶頂の女優、富士洋子を狙う。  この事件を調べていた犯罪研究者にして私立探偵の畔柳(くろやなぎ)友助博士と助手の野崎三郎青年は、警視庁の波越警部とともに撮影所やロケ現場の警備を最大限のものとして賊を捕らえようとするが、蜘蛛男は医師などに化けて近づき、何度も捕り物が行われるものの、いつも逃亡を果たしてしまう。  蜘蛛男に東京中が恐怖のドン底に落とされるなか、警視庁における蜘蛛男対策会議の場に突然、名探偵の誉れ高い明智小五郎がその噂話をしているさなかに姿を現す。  明智は洋行から帰ってきたばかりであったが、すでに蜘蛛男の正体をつかんでいた。明智小五郎と蜘蛛男の対決が始まる。洋子は休養を兼ね、田舎で匿名にてかくまわれるが、それは明智の仕掛けた罠で、かぎつけた蜘蛛男はついに明智に捕らえられる。  しかし突然洋子は蜘蛛男を逃がしてやろうとする。やがて渓谷で蜘蛛男と目される人物と洋子の遺体が発見され、事件は終わりを告げたかに見えたが、今度は49人もの若い女性が誘拐される事件が起こる。  そして突然都心に現れた異様な大パノラマ館。蜘蛛男の最後の犯罪芸術が完成しようとしていたのだった……。
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