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呪いの館
1976年2月、東京は冷たい冬の風が吹きつけ、街はどこか静まり返っていた。金田一俊介は、父親譲りの推理力を頼りに、警視庁の依頼で新たな事件の調査に取り掛かっていた。しかし、この事件は一筋縄ではいかない、闇が深いものだった。
その日、俊介はいつものように親友の中野とともに、都内の古びた洋館に向かっていた。この洋館は、過去にいくつもの不可解な事件が発生し、地元でも忌み嫌われている場所だった。
「俊介、ここ、本当に入るのか?」中野はおそるおそる聞いた。
「もちろんだ。何かが隠されている気がする。俺の直感がそう言ってるんだ」と俊介は自信満々に言い放ったが、どこかその言葉には不安が混ざっていた。
洋館の内部は寒気がするほどの静寂に包まれていた。古びた家具や、埃をかぶった絵画が、まるで時間が止まっているかのような感覚を与えていた。
「ここで何かが起こったのは確かだな」と俊介は呟きながら、慎重に足を進めていった。中野は少し離れて、いつものように俊介にパシられながらも、何か違和感を感じ取っていた。
「なあ、俊介、この場所、普通じゃないよ。なんか悪い予感がする…」中野が不安げに言った。
その時、俊介の足元で突然、床が音を立てて崩れた。俊介は驚いて体を支えたが、その瞬間、強烈な冷気が部屋中に充満し、俊介の推理力が急速に鈍っていくのを感じた。
「まずい…体が思うように動かない…」俊介は額に汗を浮かべながら言った。
「俊介、しっかりしてくれ!なんでこんな時に弱くなっちまうんだよ!」中野は焦りつつも、どこか俊介を頼りにできない現状に苛立ちを感じた。
「…どうやらこの館には、何か悪い力が働いているようだ…」俊介はかすれた声で言った。「ここから出たほうが…」
しかし、俊介が言い終える前に、部屋の奥から異様な影が現れた。それは、人間の形をしていたが、顔は歪み、目は空洞のように黒く、まるで悪夢の中の存在だった。
「こいつは…まさか、都市伝説で聞いた影の魔物か?」俊介は身構えたが、体が思うように動かない。
中野は迷ったが、ふと何かを思い出したように、ふくらはぎのポケットから小さな魔法の石を取り出した。中野には、悪行を行った際に一時的に魔法が使える力が宿っている。普段はその力を抑えていたが、今は使うしかないと感じた。
「俊介、ちょっと見てろよ。俺だって役に立つんだ!」中野は石に手をかざし、低く呟いた。「闇の力よ、我に力を与えよ!」
すると、石が淡い光を放ち始め、中野の体に暖かいエネルギーが流れ込んだ。彼はその力を使って、影の魔物に向かって手を伸ばし、呪文を唱えた。
「炎の奔流よ、闇を焼き尽くせ!」
突然、中野の手から炎が放たれ、影の魔物に向かって突き進んだ。魔物は悲鳴を上げることなく、ただゆっくりと消えていった。
中野は息を切らしながらも、笑顔を見せた。「どうだ、俊介。これで一件落着だろ?」
しかし、俊介はまだ呆然としていた。「まさか、お前がそんな力を…」
中野は肩をすくめた。「ま、悪行をちょっとやっちまった代償ってところさ。でも今は、その力が役に立ったってことでいいだろ?」
俊介は黙って頷いたが、その心には複雑な思いがあった。彼の推理力が鈍ってしまったこと、そして中野の魔法が事件を解決したことに対する嫉妬と安堵が入り混じっていた。
洋館から外に出ると、冷たい風が彼らを迎えた。だが、二人は無事に事件を解決したことで、少しだけ温かさを感じていた。
「まあ、とにかく無事でよかったよ。だけど、これからは俺ももっとしっかりしないといけないな…」俊介はつぶやき、空を見上げた。
その言葉に、中野は微笑み、「安心しろよ、俺たちは相棒だからな」と答えた。二人は冬の寒さの中、再び歩き出した。新たな事件に立ち向かうために。
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