名探偵二世

1975年の謎解き

🔖文字数は20,000文字以上

　金田一俊介　推理力は抜群だが、戦闘力が強かったり、体やメンタルが弱かったり、わるい事をしたときは推理力が下がる
　中野　ワトスン役、金田一とは性格が正反対。パシラれてる。悪行を行うと魔法を使える

　1975年、昭和の日本は高度経済成長のピークにあり、東京はその象徴として急速な発展を遂げていた。その一方で、地方の町々は時代の変化に取り残され、古い風習や伝統がまだ色濃く残っていた。

　静かな田舎町、信州の片隅にある小さな村、黒沢村。この村には、長い歴史を持つ古びた屋敷が一軒佇んでいた。屋敷は村の名士、黒沢家のものであり、村全体がその存在に支配されているかのようだった。

　ある日、黒沢家の主である黒沢辰之助が謎の死を遂げる。彼の死は一見すると病死のようだったが、村人たちの間では、不吉な噂が囁かれ始めた。辰之助が死の直前に口にした、「父の呪いが私を追ってくる…」という言葉が、不安を掻き立てていた。

　黒沢家にまつわる謎を解明するため、一人の若い探偵が村にやってきた。彼の名は金田一俊介。伝説的な名探偵、金田一健三郎の息子であり、父親譲りの鋭い推理力を持つ青年だった。
　俊介は東京都内の古い商店街で育った。商店街には個人経営の店が立ち並び、地元の人々が支え合うコミュニティが形成されていた。彼の両親は、小さな本屋を営んでおり、俊介は幼少期から本に囲まれて育った。彼の家は決して裕福ではなかったが、本に囲まれたその環境は彼の知識欲を育み、彼の好奇心は日々広がっていった。

　俊介の父、金田一健三郎は厳格でありながらも情熱的な人物で、古い探偵小説や歴史書を愛読していた。表向きは本屋だが、実は私立探偵だった。
　彼は俊介に探偵小説を読み聞かせることを楽しみとしており、息子にもその影響が少なからず及んだ。父親の影響で、俊介は推理小説や謎解きに興味を持つようになり、幼い頃から友達と一緒に「探偵ごっこ」を楽しむようになった。

　俊介は勉学にも優れ、特に論理的思考や分析力に優れていた。中学校では理科と数学に秀でており、その論理的な思考は周囲の教師たちからも一目置かれていた。しかし、彼は同時に周囲との折り合いが悪く、どこか孤立した存在だった。彼が持つ洞察力と鋭い観察眼は時にクラスメイトたちを戸惑わせ、誤解を招くこともあった。

　高校に進学すると、俊介は自らの孤独を紛らわすためにさらに読書に没頭した。特に歴史と犯罪学に強い関心を持ち、古今東西の事件や未解決事件について調べることに時間を費やすようになった。その頃、彼は探偵になることを夢見た。

　俊介は、父の足跡を辿るようにして黒沢村に到着した。父、健三郎は生前、この村を訪れたことがあり、その時に黒沢家と何らかの関わりを持ったことがあった。

　村に到着した俊介は、早速黒沢家を訪ねた。黒沢家は一見して豪華な屋敷だったが、その内側には古い伝統や秘密が潜んでいることを俊介は直感的に感じ取った。

　黒沢家の屋敷内で、俊介は家政婦の老女、綾子と出会う。彼女は長年黒沢家に仕えており、屋敷の歴史に精通しているが、何かを恐れているかのように口を閉ざしていた。

「黒沢家には、古い言い伝えがあるのです…」

　綾子は、口を開く前に何度もためらい、ついにその一端を俊介に明かした。

「かつて、この家の当主が恐ろしい罪を犯し、その呪いが家族に降りかかっていると…」

　綾子の言葉に、俊介は黒沢家の闇が単なる迷信ではなく、何らかの現実的な裏付けがあるのではないかと感じた。
　黒沢辰之助の死に疑念を抱いた俊介は、村人たちから情報を集め始めた。村人たちは口を揃えて「黒沢家には近づくな」と言い、何かを隠そうとしていた。

　村の小さな居酒屋で、俊介は村人たちの話を聞き出すことに成功する。そこでは、黒沢家の過去について語られていた。かつて、辰之助の父親である黒沢徳之助は、村の他の地主たちと争い、彼らを追い詰めて村を支配するようになった。しかし、その過程で彼は数々の非道な行いをし、怨みを買っていた。

「徳之助の死もまた、不自然なものだったんだ…」

　村人の一人がぽつりと呟いた。徳之助は数十年前に謎の死を遂げ、その後、黒沢家には不幸が続いていたという。

　俊介は、この一連の出来事がすべて関連していると考え、徳之助の死に関する記録を調べ始めた。

　俊介は、村の古い資料館で徳之助の死に関する新聞記事を見つけた。その記事には、徳之助が村の山奥で亡くなったことが書かれていたが、死因については明確な記述がなかった。

　同時に、俊介は黒沢家の財産が、村の他の家族から無理やり奪い取られたものだという事実を知る。その財産の中には、徳之助が隠し持っていたという金塊や宝物も含まれていた。

　俊介は、黒沢家の地下室に隠された秘密が事件の鍵であると確信し、綾子の助けを借りて屋敷の地下室へと忍び込んだ。

　地下室は暗く、埃っぽい空間だったが、その奥に進むと、古びた金庫が見つかった。俊介は金庫を開けると、そこには徳之助の日記が隠されていた。

　日記には、徳之助が自らの罪と、その罪を隠すために犯した恐ろしい行為について書かれていた。さらに、彼の死が単なる事故ではなく、ある人物による復讐であったことも示唆されていた。

　日記を読んだ俊介は、すべての真相に気づいた。黒沢辰之助の死は、父徳之助の過去の行いによって引き起こされたものであり、その背後には村の中で長い間隠されていた憎悪があった。

　その憎悪を抱いていたのは、村人たちの一人であり、かつて徳之助によって全てを奪われた家族の生き残り、烏野永吉(うのえいきち)だった。永吉は、長年にわたり復讐の機会を伺い、ついに辰之助を手にかけたのだった。

　俊介は、永吉と対峙し、彼の悲しみと憎しみの深さを理解しながらも、法の前に裁かれるべきであることを説得した。

　永吉は、俊介の説得に涙を流しながらも、最終的には自らの罪を認め、警察に出頭することを決意した。

　事件が解決し、黒沢村には再び平穏が訪れた。金田一俊介は、父のように困難な事件を解決し、その名を世に知らしめることとなった。

　しかし、俊介の心には複雑な感情が残った。犯人の心情を理解しつつも、彼は正義を貫くべきか、それとも人としての情を優先すべきかを悩んだのだった。

　それでも、彼は父、金田一健三郎の教えを胸に刻み、新たな事件に向けて歩みを進めていった。