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4.寂しい気持ち
「へえ、ラハールに帰る途中で捕まったんだねえ。もしかしてネネも学校に?」
「ううん、違うよ。親戚のお家に向かう途中だったの。ラハールは獣人に優しい国だから」
「ほうほう。ラハールは獣人に優しいってことは、優しくない国もあるんだねえ?」
「……うん。優しくない国のほうが多いよ。アスドーラはノース王国以外の国に行ったことは?」
「うーん、ないかなー。だからラハール初等学校が楽しみだったんだけどなあ」
「そっか……私たち、どうなっちゃうんだろうね」
「売られるんじゃないの?誰が買うのか気になるよねえ、僕を買ってどうするんだろ」
「……そう、だね」
ノース王国で初めて、売買という行為を知った。そして売買を行うにはお金が必要であるということも。
しかし、お金や売買が人々の生活を潤すこともあれば、渇きを与えることもある、という酷い事実を知らなかった。
人間や亜人が売買されて何をされるのか。
そもそも何故売買されるのか。
そして何故、ネネは泣いているのかも理解できなかった。
「どうして泣くの?」
「……アスドーラは怖くないの?寂しくないの?」
「うーん、あんまり」
「強いんだね。私はすごく怖いよ。お父さんと、お母さんに会いたくて、寂しいよ」
アスドーラは、2つの感情について理解できなかった。
その正体が気になり、不謹慎にも泣きじゃくるネネに尋ねる。
「怖くて寂しいと、泣きたくなるの?」
「……怖いと血の気が引いて指が冷たくなったり、寂しいと胸に穴が空いたように寒くなったり、私みたいに泣いちゃったり。
アスドーラって、空気が読めない変な子なんだね」
「ええ?ごめんよ。怒らせる気はないんだ」
「うん、分かってる。でも今は……慰めて」
「慰める……」
世界最強のドラゴンといえど、44億年の無は知を欲するに至らず。
45億年目に初めて友だちを欲し、そのために知を欲した。
そんなアスドーラに、慰める秘策はなかった。
けれどネネの震える背中が、寒さに身を震わせているようで、ただただ背中をさすり暖めようとした。
すると階段を降りてくる足音が響いた。
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