限界をこえた私に捧ぐ

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その日、私は死にかけていた。 だんだんと意識が遠のく中で、頭に浮かんでくるのは、今まで食べたものの数々。 ” タンポポのサラダ、それにあの鳥の丸焼きは美味しかったな。タンポポはあくを抜かないとひどい味だったけど……あ、あとあのキノコは意外と美味しかったなあ。見た目、真っ赤なのに―――” 走馬灯のようにぐるぐると脳内を駆けめぐる食べものたち。 空腹のせいだろうか、それらが目の前にあるかのようにやけに鮮明に見えた。 そしてもう意識が完全になくなるというその瞬間――― 私の頭に最後に浮かんできたのは…… 「マーナ店のアンパン……!」 ふわふわの食感と絶妙な甘さのあんこ。 1日20個のみ販売され、開店と同時に売り切れるほどの人気のパンを、私は1度だけ食べたことがある。 そうだ、あれをもう一度食べたい……! するとぼんやりしていた脳内は急に冴えわたり、強い願望が彼女を支配する。 そのとき、まばゆい程の光が彼女を包みこんだ。
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