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【エピローグ】
「…………んん? ……カレンダー、なの? コレ?」
手渡された男の子が聞いてきたので、父親はうなずいた。
「うん、そうそう。……その古い……1998年の1月と2月のカレンダーね……お父さんの宝物なんだよ」
「たからもの?? ……こんなのが、なんでー?」
男の子が首を傾げる。
父親「それさ……お母さんがお父さんにプレゼントしてくれたものなんだ。お父さんとお母さんがまだ中学生の頃に……」
男の子「へ、へえぇぇぇ〜〜〜」
父親「……よく見ると、ほら、お母さんが描いてる漫画に出てくるのに似てるでしょ? ……この頃から、お母さんは絵を描くの、上手だった」
男の子「……ん、ん、うん。……お父さん、お母さんさ、いま……あっちの部屋で、なんかやってっけど……」
父親「いまは追い込みに入ってる……」
男の子「……追い込みってさ……あれでしょ、お母さんが誰かに追いかけられてるって、ことでしょ? ……お母さん、もう逃げられなくなってるの?」
父親「あっはっははははは、はははっ、そうそう……あっはっはっはっは、たっちゃん、よーくわかってる、それだよそれ」
たっちゃん、と呼ばれた男の子「……お父さん、笑ってないでさ。助けなくて、いいのー? いっつも、お手伝いしてるのに。……お母さんを逃げれるようにしてあげてよ」
父親「あーー……もう、お父さんにできること、ないんだな。……お母さんにしかできない、仕上げに取りかかってるから」
たっちゃん「しあげ? お父さんじゃ、できないの? ……お母さん、逃げれるかな?」
父親「……うん。仕上げはお母さーん、なんだ。……お母さんはこれまでも逃げ切れたから、大丈夫だって」
たっちゃん「そーなの?? 逃げ切れた?? ほんとーかなぁ?」
哲哉と一人息子の辰実が話していたところ、真由実の叫び声が響いてきた。
「…………ぃぃい、いよっしゃあああぁぁぁぁぁーーーーッ!! できたあぁぁぁ〜〜〜ッ!! これで、完璧だああぁぁっ!!! これほどのものはそうそう生まれなぁーーいっ!!!」
「……な? 大丈夫だったろ? ……逃げ切れたよ、お母さん」
父親が笑顔で言うと「……ふ、ふーーん、そーなの??」と、一人息子は可愛い瞳をぱちくりさせた。
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