わたしの自信作(5)

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わたしの自信作(5)

 このときに……CD-Rなんかあれば、話は別だったでしょーなぁ。  フロッピーディスクに保存出来る容量って……1.44MB??  実際には、1.36MB程度??  数字で示されているものだけが、真実ではないのだ……というのを、このあたりでわかってくる中学生です。  データ圧縮ができたなら、まだ違ったかもしれないんですがぁ……そんなこと、知らないお年頃なんですわよ。  そうよ、解凍・展開なんて知らねぇってばよ。  与えられたフロッピーディスクは地味な見た目とは裏腹に希少な品でした。  作成したものを保存する、作品を手元に残すといったことが、これほど困難をきわめる行為であったとはっ……。  技術の時間にCD-Rが焼けたなら、ううん、CD-RWでもいい、そこに650MBの保存領域があったのならば……わたしは……わたしはっ……。  数多くの作家が創作活動をやめてしまった理由は案外……こんなところにあった気がしてなりません。  しゅんとしてしまったわたしは席へと戻り、ペイントが起動された画面を見つめました。  あのときのペイントのキャンバスって……どんなサイズだったのだろう? 640x480? ……800x600? ……1024x768ではなかったように思いましゅ。  ディスプレイの解像度なんて、何のことか全くわからん中学生でした。  ……ふと、隣の席にいる友達を見ると、何やら紙を両手に持ち、にこにこしています。 真由実「……なに、それ?」 友達「ん? カレンダー、印刷したの。……どうせなら、使えるものを作ろうと思って〜」 真由実「…………。いんさつ?」 「ほら……あそこにあるプリンターでできるんだよ」  友達は長い机の端に置かれた機器を指さしました。  …………そうか、そういうことか、若き友よ。
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