香り高くて儚い嘘

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 既に腐りかけていた悠人の脳に真実が突き刺さるように染み渡る。余命宣告。自殺。虚構が次々と剥がれ落ち、偽りと散る。  乱雑な頭にあの日の衝突音が響き渡った。思考が行動に追いつかず、気付けば、悠人はロープと婚約指輪を手に取り、椅子に立っていた。指輪を固く握り締め、部屋を見下ろす。  ずっと一緒に生きていこうね、紡。それが悠人にとって、最初で最後の紡へのプロポーズの言葉となった。
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