香り高くて儚い嘘

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 そんな貴方のおかげで、私の人生の最期はとても幸せでした。笑い合って、時々泣いて、いっぱい嫉妬して、感情が追いつかないくらい沢山沢山貴方に恋をした。来世もまた隣で笑い合えたらいいな。  今まで本当にありがとう。さようなら。    窓から注ぐ淡い光を浴びながら、天使の舞のように優雅にその手紙は落ちてきた。(つむぎ)にオススメされた小説『共依存(きょういそん)』を開いた瞬間のことだった。  パサッという音とともに、悠人(ゆうと)は我に返った。その拍子に、エスプレッソカップを傾け、中身を全てテーブルにこぼしてしまった。  店内に響いた音で店主がこちらの異変に気付き、おぼつかない足取りで布巾を持ってきた。大丈夫ですか、と心配などしていないようなトーンで黙々とテーブルを拭く。 「この本に手紙が挟まってて」テーブルに落ちた二つ折りの手紙を指差すが、その手紙にもエスプレッソが豪快にかかっていた。  店主は手紙に染み込んだエスプレッソを調子よく拭き取る。 「マイナス14⋯⋯ええと」店主はそう口にし、レジ後ろの壁に貼ったカレンダーを振り向く。「4月3日か」  ブツブツと呟きながら、店主はキッチンへ戻って行った。
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