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新たな一歩
春の陽射しが心地よい午後。
俺…千夜保(せんやたもつ)は、恋人の諸橋香澄(もろはしかすみ)とのデートの約束を楽しみにしていた。
ふと香澄の笑顔がどれほど大切かを考える。
そんな中、いつものマブダチ、鈴木航(すずきわたる)や1年先輩で今は調理師専門学校に通っている山村凌(やまむらりょう)との日々を送っていた。
学園の廊下には、つい先日受けた中間試験の成績順位が貼られている。
俺は鈴木と順位表を見ていた。
「鈴木、又、学年トップだな」
「諸橋さんと一点差ですけどね…」
鈴木は眼鏡のツルを上げながら、ちと離れた所で女友達と順位表を見ている香澄に目をやった。
俺もつられて香澄達の方を見る。
「香澄、凄ーい!」
「女子の中ではトップじゃない!」
女共のはしゃいだ声が、俺等の所まで聞こえてくる。
「ありがと。でも、運が良かっただけよー」
女友達に笑顔で応える香澄。
…あ?
遠目だが、その笑顔が一瞬、引きつってたような…。
俺がそんな香澄の様子を気にして見てると、鈴木に声を掛けられる。
「千夜くんも家庭科の実習の腕は上手じゃないですか」
鈴木の声に俺は視線を奴の方に戻した。
「これでも一応、パティシエ目指してるからな」
ケーキ作りも調理実習も基本は同じだ。
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