新たな一歩

3/10
前へ
/43ページ
次へ
「鈴木の成績なら、ホントになれそうだな」 確か山村は、将来は自分の料亭を持ちてーという夢があった筈だ。 そういや、香澄の将来の夢って何だろうな。 まだ付き合い始めて日が浅い俺は、香澄の将来の夢をまだ聞いてねー。 そう思って再び香澄達が居た方に視線をやった時には、もう彼女等は居なくなっていた。 「鈴木。香澄の様子が変じゃなかったか?」 「諸橋さんの…ですか?いつもとお変わりなく、明るく見えましたが?」 鈴木は怪訝そうに俺に返した。 だが、確かに笑顔が引きつってたように見えたんだがな…。 俺の気の所為だと良いんだが。 「諸橋さんについて気になる事があるなら、直接訊いてみたら如何でしょうか?」 まあ確かに俺と香澄は付き合ってる訳だし、それが一番手っ取り早いだろ。 その上で何ともなけりゃー問題ねーし。 徐々に人がバラけていく。 「千夜くん。午後の授業が始まります。僕達も、そろそろ自分達の教室に戻りましょう」 「ああ。それは良いけどよ。次の授業、春日部(かすかべ)じゃねーか。ったりぃな」 「駄目ですよ。担当教師が誰であれ、エスケープは。これもパティシエになる為の試練です」 やれやれ…試練、ねえ。 気が進まねーのに変わりはなかったが、そう鈴木に言われたのも有り、俺は鈴木と教室に戻った。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加