新しい学校

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 話しかけてもクスクス笑って相手にしてくれないクラスメイト、  怒ると鬼のように声を張り上げる筋肉教師、  それから一ヶ月も平気で休んだ上、  教師に楯突く金髪のヤンキー。  朝陽は、これから待ち受けているであろう未来が嫌でも想像出来て、ただただ頭を抱えた。  逃げ場がない。  どこにも朝陽の逃げ場はなかった。  そのとき、視界の片隅でひらひらと紙がはためく。  そこで朝陽はひらめいた。  善意、というよりは、誰にも理解されない、ある種の職業病といえる。  けれど今の朝陽にとっては、唯一の希望でもあった。 「……あの」  朝陽がおずおずと声をかけると、秋吉という男はこちらにぐるりと首を回す。思わず息を飲んだが、なんとか勇気を振り絞って口に出した。 「教えようか?……そのプリントに書いてある問題」  一つ弁解するとすれば、不良=勉強が不得意、だと決めつけていたわけでもない。  一か月も学校に来ていないのだから、いくら地頭がよかったとしても、勉強についていけてない可能性は十分にある、そう思っただけ。  決してバカにはしてない。  ……してなかったのに。 「ばかにしてんのかてめー」  睨みつけられて、すべてが終わった。
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