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3話
「おはよう」
それからというもの、朝陽は秋吉が登校するたび挨拶をした。
といっても、半分はおそるおそる、半分は仕方なく、といった感じで。
返事がかえってくるときもあれば、無視されるときもある。
はじめて無視されたときは、とうとう秋吉にも見捨てられた、と絶望の海に沈んだが、次の日はちゃんと挨拶を返してくれたので、息を吹き返したようにほっとした。
どうやら相当の気分屋らしい。
「おはよう」
「……っす」
そして今日も、二限目の途中に遅れて登校してきた秋吉に挨拶をする。
聞こえるか聞こえないかくらいのか細い声。
朝陽のほうへ一瞥もしないのに、しかしちゃんと返してくる。
秋吉は席に腰かけると、登校してきたばかりだというのにもかかわらず、机に伏せる。
朝陽はちらりと金色の髪を眺めた。
金色といっても、よく見ると茶色がかっている深い色。
根元には、成長した証でもある黒い髪が少しだけ出てきていた。
(そういえばよく寝るよな……)
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