11人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな関係を続けて数日後、ついに朝陽は秋吉に話しかけることに決めた。
さすがに挨拶を交わすだけなのは物足りないし、せっかく隣の席なのだから普通に話したい。
いまだ秋吉のことは怖いし、自分とは真逆の人間と友達になることに躊躇してしまう自分もいた。
しかし今の自分は相手も手段も選んでいる状況ではない。
ここ三日間、毎回挨拶を返してくれていたのもあり、もしかしたら、そう思った。
(よし、今だ)
さっきからずっとスマホを触っている秋吉に、ゆっくりと話しかける。
「あの……前はどうして長く休んでたの?」
寝ぐせのついた金髪の髪が、まるで触覚のようにはねたと思った瞬間、秋吉がこちらを向いた。
あまりの厳しい目力に思わず朝陽は、ゆるんでいた背筋がシュッと伸びる。
「は?」
「その……前に一ヶ月も学校に来てなかった言ってたから、どうしてだろうって……」
「はあ?」
秋吉は、なんでわざわざそんなしょうもないことを訊いてくるんだ、と言わんばかりに、不愉快そうな顔でこちらをじっと睨みつけると、
「理由なんかねーだろ。バカかよ」
と吐き捨てた。
「バ……」
クラスメイトとこの男、彼らは同様に朝陽を見下すような態度を見せていたが、その種類はまるで異なっていた。
秋吉の場合、朝陽を軽蔑しているというよりも、他人そのものに無関心。
荒々しい言葉遣いも、相手を傷つけるつもりがあるわけではなく、それが彼自身の口癖のようだった。
しかし、朝陽にとって、それはどうでもよかった。
好意で話しかけただけなのに、なぜそれほどきつい返しをされなきゃいけないのか。
(もう二度と話しかけるもんか……!)
そう思った。
……思ったのに。
最初のコメントを投稿しよう!