3話

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 待ち構えていた女教師に小さく険のある口調で問いかけられると、秋吉は面倒くさそうな顔で応えた。 「……あー。おかげさまで」    もともと目付きが悪いため、秋吉のその目が女教師を敵視して睨んでいるのか、ただ普通に視線を向けているだけなのかわからなかったが、まるで刺すような目に、隣で見ている朝陽はひやひやした。 「みんな迷惑してるんですよ。君が寝ているせいで授業が中断されて」 「静かにしてたつもりなんだけどなあ。もしかして、いびきかいてた?」 「そういう問題じゃない。授業中に寝ている生徒がいると、私のパフォーマンスが低下するんです。寝るのであれば、今後一切、私の授業には出ないでください」 「そりゃ眠るような授業をやってるそっちの力不足だろ」 「なんですって?」 「あーもうわかった。保健室で寝てくるわ。ーーそんじゃ」  だるそうに立ち上がろうとする秋吉を、女教師が引き止める。 「誰が出ていっていいと言いました?」 「は?」 「あなたのところで授業が止まってると言ったでしょう。 私の授業は一人一人に問題を解いてもらいながら進めています。それがちょうど秋吉くんのところで中断されているんです。出ていくなら、今から言う問題を解いてからにしてください」 「は」  おどろく秋吉に隙を与えないよう、教師は彼から視線を外さず畳みかけるよう続けた。 「……南北朝時代から動乱が続いたことで守護が獲得した権限で、荘園の年貢の半分を徴収する権利を与えられた法を何と言うでしょうか?」 えっ。  朝陽は驚いた。 ーー鎌倉幕府を立てたのは誰か。  これが秋吉が答えるはずだった問題だ。  明らかにそんなところまで授業は進んでいない。
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