3話

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ーーーー  復讐の日はすぐに訪れた。 「秋吉くん、答えなさい」  例の日本史の教師が、黒板の前から鬼の形相で秋吉に言う。  新任教師といえども、大人だ。この前のはたまたま虫の居所が悪かっただけで、そう何度も仕掛けてくるはずはない。 ーー朝陽はそう予想していたが、実際には違った。  よほど秋吉を目の敵にしていたのだろう。  秋吉が少し眠ったふりをしただけなのに、すぐに絡み始めた。  朝陽としては、いくら復讐するにしても、秋吉が授業中に眠っていた以上、どちらにも悪い部分がある気がして気は進まなかったが、「今回だけ」と決めて加担することにした。 「南北朝時代には歴史書や軍記物語がつくられましたが、源平争乱以後、1180年の後鳥羽天皇の誕生から、1333年に後醍醐天皇が隠岐から京都に還幸するまでの歴史を記したものは?」 また教師が問題を秋吉に問いかけたとき、さりげなく教えてやった。ノートの切れ端に書いて、わきの下から見せたのだ。  秋吉はそれを確認すると、あたかも前々からわかっていたような顔で、秋吉は答えを口にする。 「”増鏡”。合ってる?」  合っていた。しかし教師は何も言わなかった。  それどころか日本史教師は、まっすぐに秋吉を見て、さらに問題を付け加える。 「後醍醐天皇に仕えた北畠親房が、南朝の正当性を主張した書は?」 (え……)  まさか二問目を出してくるなんて。  予想外の展開に朝陽も秋吉も驚いていたが、仕掛けた以上、ここで負けるわけにはいかない。  朝陽は軽く深呼吸をすると、秋吉に答えを教える。 「”神皇正統記”」 「足利尊氏が政権を獲得するまでを記した歴史書の名前は?」 「”梅松論”」 「……」  日本史の教師は悔しそうに顔を硬直させた。 「ーーでは、その”梅松論”に一番最後に記されている戦の名前は?」
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