4話

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 雄一は前の学校の友達であり、朝陽の幼なじみだった。  心配性で気が弱いところがあるけれど、友達思いの優しい性格。  朝陽が引越しすることになって、一番寂しがってくれたのも彼だった。  別れ際、かすかに涙目になっていたのを覚えている。 (元気にしているかな……)  朝陽は自分の部屋に行くと、机の上に置いてあった雄一からの手紙を手に取る。  白地に、黄色い鳥の絵がちいさく書かれたかわいらしい便せん。  少し不便で前時代的だけれど、雄一はスマートフォンを持っていない。  それに、これはこれで新鮮だし、彼の純粋でやさしい心を最大限に表現できるものだと思う。  朝陽は手紙を開けた。  彼の性格をそのまま表したような丸みを帯びた幼い筆跡で、朝陽への心配と近況報告が書かれてある。  驚いたのは、最後。 『追伸・スマホデビューしました!』  そのメッセージとともに記載されていたのが、スマートフォンの電話番号とメッセージアプリのID。朝陽は即座に登録して、『久しぶり、朝陽です』と雄一にメッセージを送った。 『久しぶり!元気?』  数十分後、さっそく雄一からそう返事がきた。  スマホの項目に『雄一』と表示されたのを見た瞬間、思わず感動して、わ、と声がでてしまう。 『元気だよ』 『新しい学校、もう慣れた?』 『うーん。まだかな』 『大変そうだね。……友達はできた?』
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